2010 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNAを標的とした胃がんに対するエピジェネティック治療
Project/Area Number |
21790327
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎藤 義正 慶應義塾大学, 医学部, 共同研究員 (90360114)
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Keywords | マイクロRNA / エピジェネティック治療 / 胃がん / DNAメチル化阻害薬 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬 |
Research Abstract |
申請者は前年度の研究において、胃がん細胞にDNAメチル化阻害薬やヒストン脱アセチル化酵素阻害薬などを用いたエピジェネティック治療を行うことによって、がん抑制マイクロRNA miR-512-5pの発現を活性化し、標的がん遺伝子MCL1を抑制することでアポトーシスを誘導することに成功した(Saito Y et al.Oncogene 2009)。さらに本年度の研究では、マイクロRNAが消化管悪性腫瘍のみならず、機能性ディスペプシアをはじめとする機能性消化管障害の病理にも重要な役割を果たすことを示した(Saito Y et al.Gastroenterology 2011)。長期間H.pyloriに感染させたマウスの胃におけるマイクロRNAの発現プロファイルを検討したところ、筋組織特異的マイクロRNAであるmiR-1とmiR-133が有意に発現低下している結果を示した。筋組織特異的マイクロRNAの発現低下は、それらの標的遺伝子であるHDAC4やSRFの発現を活性化し、胃平滑筋の過形成を誘導した。さらに著明な胃平滑筋の過形成を認めたH.pylori感染マウスにおいては胃排出能が有意に亢進していた。 マイクロRNAは内在性のsiRNAとも考えられており、国内外で創薬の新たな標的として大きな注目を集めている。また、エピジェネティック治療は元々生体に存在するマイクロRNAの発現を制御することから、従来の外来性siRNAなどを用いた遺伝子治療よりも安全性の点で優れていると考えられる。さらに一つのマイクロRNAが複数の標的遺伝子を抑制するため、相乗効果が期待できる。本研究の成果が悪性腫瘍や機能性消化管障害の新たな治療戦略につながることが期待される。
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