2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790330
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
富田 毅 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20302242)
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Keywords | 血清アミロイドA3 / 腫瘍転移 / クララ細胞 |
Research Abstract |
多くのがん細胞は、臓器特異的に転移することが知られている。例えば、乳がんは高い確率で肺に転移する。このメカニズムを分子レベルで解明することは、がんの治療成績の向上のために不可欠である。本研究では、肺特異的ながんの転移には肺に特異的なレジデント細胞の関与があるとの考えに基づき、肺上皮細胞とがん細胞との相互作用に焦点を絞ったアプローチを行った。背部皮下に腫瘍を移植した腫瘍マウスをモデル動物として解析を行ったところ、腫瘍マウスでは、転移が起こる前に、がん細胞の肺への転移を誘引する「転移前状態」が肺で形成され、それに伴い骨髄からCD11b陽性細胞が肺へと動員されることが確認された。この転移前状態の形成にはS100A8-血清アミロイドA3-TLR4のカスケードが機能している。本研究では、細気管支上皮細胞であるクララ細胞が、腫瘍原発巣からのサイトカイン刺激を受けて血清アミロイドA3の増幅起点となりうることを、マウス実験、器官培養実験、細胞培養実験により示した。さらにクララ細胞で産生された血清アミロイドA3が肺胞2型上皮細胞および肺胞マクロファージに作用しTNFαの発現上昇を誘導することが明らかにした。これらの結果をまとめると、転移前状態においては、腫瘍原発巣からのサイトカイン刺激が直接クララ細胞に作用するか、または肺微小血管内皮細胞においてS100A8-血清アミロイドA3のシグナリングを経由したのちにクララ細胞に作用するかのいずれかの経路を経て、クララ細胞を活性化する。次に、クララ細胞の働きにより継続的に血清アミロイドA3が合成・分泌されると、TNFαが肺で生成されるため、腫瘍原発巣からのサイトカイン刺激無しにS100A8-血清アミロイドA3-TLR4のカスケードが維持されると考えられる。
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Research Products
(4 results)