2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子イメージングを用いた癌化に伴うINK4A遺伝子発現サイレンシング機構の解析
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21790332
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
山越 貴水 (財)癌研究会, 癌研究所がん生物部, 研究員 (50423398)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / p16 / インビボ・イメージング / エピジェネティクス / 皮膚化学発癌 |
Research Abstract |
ヒトの癌細胞において最も高頻度に失活していることが知られている癌抑制遺伝子p16は、様々な原因によって失活していることが明らかとなっているが、その詳細は不明な点が多い。癌細胞においてp16遺伝子の発現がサイレンシングされる機構を明らかにするため、p16発現をマウスの生体内でリアルタイムに可視化・計測出来るシステムを用い、皮膚化学発癌の進行過程で調べた。その結果、良性腫瘍が形成されてからかなり時間が経過するとp16の発現が著しく上昇するが、この時、p16の発現を負に制御することが知られているDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1)の発現が著しく低下することを見出した。DNMT1はヒストンメチルトランスフェラーゼであるG9aと相互作用してヒストンH3のリジン残基の9番目をジメチル化(H3K9me2)することが報告されていることから、p16遺伝子領域周辺のH3K9me2レベルを調べたところ、良性腫瘍ではそのレベルが著しく減少していることを見出した。更に、培養細胞を用いて解析を行った結果、p16遺伝子領域周辺にDNMT1が結合していることが明らかになった。また更に、DNMT1の発現を抑制するとp16遺伝子領域周辺のH3K9me2レベルが低下してp16の発現が上昇することを発見した。これらの結果から、p16の発現はp16遺伝子領域周辺のヒストンのメチル化によっても精密に制御されていることが示唆された。そこで、悪性腫瘍化した組織でのDNMT1の発現解析を行ったところ、DNMT1の発現量が顕著に上昇していることが明らかとなった。この結果は、良性腫瘍が悪性化する過程ではヒストンのメチル化によってp16発現がサイレンシングされている可能性を示している。またこれらの結果は、ヒストンメチル化に関わる因子の阻害剤を癌細胞へ導入し、p16発現のサイレンシングを解除することで癌治療へ応用できる可能性を強く示している。
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