2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナルコレプシーの疾患感受性遺伝子の探索及び治療への応用
Project/Area Number |
21790336
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 卓 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (20512263)
|
Keywords | ナルコレプシー / ゲノムワイド関連解析 / Replication Study / 睡眠 / アシルカルニチン / カルニチン / 脂肪酸β酸化 / CPT1B |
Research Abstract |
これまでにゲノムワイド関連解析を行い、CPT1Bの近傍に位置するSNPがナルコレプシーと関連することを報告した。しかしこのSNPだけではナルコレプシーの遺伝要因の全てを説明できないため、新たな感受性遺伝子を探索する必要がある。そこで我々はナルコレプシーや睡眠に機能的に関連することが予想される遺伝子をデータベースを用いて網羅的に抽出した。その抽出した遺伝子とゲノムワイド関連解析の結果を照合し、候補遺伝子として202遺伝子を選択した(SNPとしては232個選択)。次にReplication Studyを行った結果、6つの遺伝子領域(NFATC2、SCP2、CACNA1C、TCRA/DAD1、POLE、FAM3D)のSNPにおいて有意な関連を認めた。また健常者群に比べナルコレプシー群でNFATC2発現量が有意に低く(P=0.005)、健常者群に比べナルコレプシー群でSCP2発現量が有意ではないが高い(P=0,06)ことを発現解析で見出した。さらにSCP2の発現量は有意であったSNPの遺伝子型によって発現量が異なることも確認した(P=3.3×10^<-12>)。 ナルコレプシーには脂肪酸β酸化(特にカルニチンシャトル)の機能異常が存在するという仮説を考えた。そこでCPT1B発現量の定量や血清中のカルニチン分画の定量を行い、この仮説を検証した。その結果、前述のナルコレプシーのゲノムワイド関連解析で有意差の認められたCPT1Bの近傍に位置するSNPのリスクアリルの数の増加につれてCPT1B発現量が減少し(P=1.0×10^<-9>)、さらにCPT1B発現量が健常者群に比べナルコレプシー群で有意に高いことを確認した(P=0.005)。カルニチン分画に関しては、平均値では有意な関連は認められなかったが、ナルコレプシー群では血清アシルカルニチン値が21%(38例中8例)で異常低値を示したのに対し、健常者群30例は正常範囲内であり、有意な関連を示した(P=0.006)。これらの結果は、ナルコレプシーには脂肪酸β酸化経路の機能異常が存在することを示唆する。
|