2009 Fiscal Year Annual Research Report
胆管癌の浸潤・転移に関する分子病理学的研究:癌細胞の上皮・間葉変換機構に着目して
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21790346
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 保則 Kanazawa University, 医学系, 講師 (30324073)
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Keywords | 人体病理学 / 肝臓 / 胆管癌 / 上皮・間葉変換 |
Research Abstract |
本年度は,胆管癌の浸潤・転移における上皮・間葉変換機構(epithelial-mesenchymal transition, EMT)の関与を明らかにすることを目的とし,培養胆管癌細胞(CCKS-1, TFK-1)および胆管癌症例の外科的切除材料を用いた病理組織学的検討を行った. 培養胆管癌細胞(CCKS-1, TFK-1)にEMTの誘導分子であるTGF-β1を作用させると,上皮系マーカー(E-cadherin, CK19)の発現が低下,間葉系マーカー(S100A4, vimentin)の発現が誘導され,EMT関連の転写因子であるSnailも癌細胞の核においてその発現が誘導された.さらに,細胞浸潤能はTGF-β1の作用により有意に亢進した.これらの変化は,可溶性TGF-β type IIレセプターを用いたTGF-β1のシグナル伝達ブロッキングにより抑制されたが,TGF-β1のSmad経路の阻害効果を有するBMP-7では抑制されなかった.胆管癌の外科的切除材料を用いた免疫染色による検討では,癌細胞がSnailの発現を示す症例はCK19の発現が低下,vimentinの発現が亢進していた.さらに,免疫染色でSnailが陽性を示す胆管癌症例は陰性症例より有意に予後不良であった. 以上の結果から,胆管癌の浸潤・転移にはTGF-β1とSnailを介した癌細胞のEMTが深く関与していることが示され,胆管癌においてTGF-β1のシグナリングをブロックすることが,癌の進展を抑制する前能性があることが示唆された. 来年度は,胆管癌のEMTにおけるTGF-β1の細胞内シグナリング経路をさらに詳細に検討する予定である.
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Research Products
(4 results)