2010 Fiscal Year Annual Research Report
53BP1核内フォーカスを指標とした原爆被爆者組織におけるゲノム不安定性の検出
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21790357
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
三浦 史郎 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (80513316)
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Keywords | 原爆被爆者 / ゲノム不安定性 / 放射線 / 53BP1 |
Research Abstract |
被爆者固形がん発症の背景因子としてのゲノム不安定性(GIN)を解析する目的で、蛍光免疫染色により被爆者乳癌症例での53BP1核内フォーカスを検索した。HER2、C-MYC遺伝子増幅または免疫染色でHER2の過剰発現の判明している被爆者乳癌症例のうち、皮膚の合併切除されている症例を対象とした。近距離群(被爆距離1.5km以下)、遠距離群(被爆距離2km以上)、非被爆者群、各々22、15、17例において表皮における53BP1の核内フォーカ数を解析した。 1)乳癌組織のがん遺伝子過剰発現との関係:計54例中遺伝子増幅またはHER2蛋白の過剰発現陽性症例は18例で、53BP1フォーカス陽性細胞は平均9.1%であった。一方、遺伝子増幅および過剰発現陰性症例でのフォーカス陽性細胞数は5.9%で有意に低値であった。フォーカス陽性細胞が10%以上を占める症例はがん遺伝子過剰発現陽性群、陰性群、各々38.9、13.9%であり、過剰発現陽性群で有意に高値であった(P<0.05)。 2)原爆放射線との関係:近距離群、遠距離群、非被爆者群のフォーカス陽性細胞は各々平均9.1、6.3、4.9%であり、放射線の影響が少なくなると、有意に減少する傾向を示した(p<0.01)。同様にフォーカス陽性細胞が10%以上を占める症例は近距離群、遠距離群、非被爆者群で各々31.6、26.7、5.9%であり有意に減少傾向を示した(p<0.05)。さらに核1個当りにフォーカス数3個以上を呈する症例は近距離群、遠距離群、非被爆者群で各々54.5、26.7、5.9%であり有意に減少傾向を示した(p<0.05)。多変量解析でも近距離であるほどフォーカスの発現が多く見られた(OR:8.5,95%CI:1.6~67.6)。 まとめ:正常細胞での自然発症性DNA損傷応答の亢進はGINの存在を示唆している。がん細胞での遺伝子増幅もGINに起因する現象とされる。被爆者乳癌は原爆放射線の関与が知られる固形がんである。近距離被爆者では放射線被曝によりGINが長期存続し、発がん過程への関与が推察される。
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Research Products
(14 results)