2010 Fiscal Year Annual Research Report
SDTラットにおける血管透過性亢進の糖尿病発症への関与
Project/Area Number |
21790378
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
河村 治清 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教 (70527902)
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Keywords | 糖尿病 / SDTラット / VEGF / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
Spontaneously Diabetic Torii (SDT)ラットはSprague-Dawley (SD)系ラットより確立された、自然発症糖尿病モデルである。ヒトの糖尿病網膜症に類似した病変を生じることが特徴である。20週齢頃より糖尿病を発症するが、これに先立ち、膵島の血管拡張、出血がみられる。この血管傷害の糖尿病発症への関与を明らかにすることを目指した。 前年度の検討から(1)SDTラットに出血毒であるハブトキシンを投与すると、膵島および糸球体での出血が強く誘発されること、(2)SDTラットにストレプトゾトシンを投与し、膵β細胞を自然経過より早期に破壊すると、本来その後に生じる膵島内および膵島周囲の出血と炎症性変化が出現しないこと、(3)VEGFシグナル阻害剤をSDTラットに投与すると、膵出血のみならず膵β細胞死および糖尿病の発症が抑制されることが明らかとなった。これらのことより、膵β細胞-血管内皮細胞相互作用の破綻が膵β細胞障害に関与するという新たな糖尿病発症機構が示唆された。 この膵β細胞と血管内皮細胞間のコミュニケーションにVEGFが関与しているものと考えられたことから、SDTラットより毛細血管内皮細胞を単離し、VEGFに対する応答性を検討したところ、SDTラットの毛細血管内皮細胞はSDラットに比べ、VEGFの刺激により誘導される細胞内シグナルが亢進していることが示された。つまり、SDTラットでは、膵β細胞から放出されるVEGFによって誘導される血管内皮細胞で過剰なシグナルが糖尿病発症に関与するという機序が見出された。さらに、糖尿病発症における血管内皮細胞の普遍的な意義を明らかにするため、SDTラット以外の糖尿病モデル動物を用いて検討を行っている。
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