2010 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージを介した腫瘍内微小環境形成の分子基盤解明と癌治療への応用
Project/Area Number |
21790388
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菰原 義弘 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (40449921)
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Keywords | マクロファージ / M2 / 腎がん / CD163 / CD204 |
Research Abstract |
我々は、前年度のマウスを使った研究で、CD204がマクロファージのM2への分化に深くかかわっていることを示した。本年度は、実際にヒトのがん組織において、CD204陽性のM2マクロファージが臨床予後や腫瘍の悪性度にどのように関わっているのかを検討した。産婦人科学教室との共同研究では、卵巣がんとマクロファージの関連性についての研究を行った。卵巣癌が進行するとがん細胞が腹腔に播種して徐々に腹水が貯留する。我々の研究で、腹水の中には多数のM2マクロファージが含まれており、これらのM2マクロファージはがん細胞を活性化させるIL-6やIL-10などのサイトカインを産生することで、がん細胞に増殖シグナルを送っていることが明らかになった。つまり、がん細胞が腹腔内に播種して増殖していく過程には、このがん細胞とM2マクロファージの細胞間相互作用が深く関わっていると考えられた。腹水中のマクロファージにはCD204が高発現しており、卵巣がんの進行過程におけるCD204の役割について現在研究を計画している。やはり、マウスを使った動物実験でも卵巣癌の進行にマクロファージが関わっていることが示されている。消化器外科との共同研究では、M2マクロファージが多い肝内胆管癌の症例は、再発しやすいという結果が得られた。また、M2マクロファージの数と制御性T細胞の数は統計学的に相関しており、がん患者での免疫抑制状態にM2マクロファージが深くかかわっていることが明らかになった。残念ながら、この検体は固定条件が悪くCD204の十分な検索が出来なかった。
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