2010 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症関連遺伝子DISC1と結合するFLJ蛋白質による大脳皮質形成機構の解析
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21790394
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
福田 敏史 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (50372313)
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Keywords | 脳 / 神経 / CAMDI / Myosin / DISC1 / 中心体 / 移動 / 層構造 |
Research Abstract |
統合失調症は人口の約1%で発症すると言われている精神疾患であるが、根本的な発症要因は未だ解明されておらず、患者数、治療費などによる社会的な損失は計り知れない。一方、大脳皮質の6層構造は、胎児発生中に神経細胞が秩序だって移動することで成立する。その過程では細胞内小器官である中心体が重要な役割を担っているが、そのメカニズムは不明である。本研究では、統合失調症関連蛋白質DISC1に結合する新規蛋白質CAMDI(FLJから改名)を同定した。CAMDIはDISC1依存的に中心体に移行した。発生中のマウス胎児の大脳でCAMDI遺伝子の発現阻害を行なうと、中心体の異常な方向性を伴う神経細胞の移動が阻害された。CAMDIの更なる機能を解析するために結合蛋白質を探索したところ、Myosin II軽鎖を同定した。CAMDIはMyosinのリン酸化に依存して結合することを見出した。また、CAMDIの配列中に全人種にほぼ等しく存在する一塩基多型(R828W、828番目のアルギニンがトリプトファンに置換する)を見出した。この多型を持つCAMDI(R828W)はDSIC1とは結合できるが、Myosinとの結合は減弱した。さらに、CAMDI(R828W)をマウス胎児の大脳皮質に導入すると、神経細胞の移動が阻害された。これらの結果は、CAMDIが中心体においてDISC1やMyosinと協調して大脳皮質神経細胞の移動を制御していることを示す。CAMDIはヒト染色体2q31.2に存在するが、この領域は自閉症の原因領域の1つとしても知られている。CAMDIの異常により、統合失調症のみならず自閉症など精神疾患全般の発症に関与している可能性が示唆された。
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