2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790396
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
浅野 謙一 The Institute of Physical and Chemical Research, 自然免疫研究チーム, 基礎科学特別研究員 (10513400)
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Keywords | 腫瘍 / マクロファージ / 死細胞 / 免疫寛容 / 貪食 |
Research Abstract |
腫瘍細胞は悪性化の過程で癌抗原分子などを発現し、「異常な自己」として免疫系に認識され排除きれる。しかしながら実際は、多くの腫瘍細胞が免疫監視を逃れ癌化学療法や免疫療法の効果を限定している。その原因の一つとして、腫瘍細胞死に伴う免疫寛容の誘導が考えられている。本研究の目的は、腫瘍細胞死と免疫抑制の関連を明らかにすることである。 まず、腫瘍死細胞を貧食し、腫瘍関連抗原をT細胞に提示する食細胞を同定するため、蛍光標識した腫瘍死細胞をマウスに皮下投与した。免疫組織学的検査、フローサイトメーターによる解析の結果、皮下投与された死細胞はリンパ流に乗って所属リンパ節に運ばれ、リンパ節洞マクロファージ(sinus macrophage)に取り込まれることが明らかになった。洞マクロファージはCD169陽性で、さらにCD11c陽性及び陰性サブセットに分類される。セルソーターを用いて精製したマクロファージをくわしく調べたところ、腫瘍死細胞抗原はCD11c陽性洞マクロファージによって選択的にクロスプレゼンテーションされることが証明された。我々の研究室では洞マクロファージのみを選択的に消失できる遺伝子改変マウス(CD169-DTRマウス)をすでに作成している。このマウスの解析により、洞マクロファージ非存在下では腫瘍死細胞付随抗原のクロスプレゼンテーションが起こらず、腫瘍特異的CD8T細胞が効率よく活性化されないことが分かった。以上の結果から、腫瘍関連抗原に対する免疫賦活化には、所属リンパ節に常在する洞マクロファージが重要な役割を担うことが示された。腫瘍の免疫系逃避機構をより明らかにするため、腫瘍内に浸潤するマクロファージの役割についてもさらに解析を続ける方針である。
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