2009 Fiscal Year Annual Research Report
癌性幹細胞の未分化性維持と腫瘍組織形成におけるCD133の機能解析とその臨床応用
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21790397
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
下里 修 Chiba Cancer Center (Research Institute), がん治療開発グループ, 研究員 (30344063)
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Keywords | 癌 / 発生・分化 / 癌性幹細胞 / CD133 |
Research Abstract |
固形腫瘍においても、幹細胞様の性質を示す細胞群が含まれることが報告されて以来、がん組織の起源となる癌性幹細胞の存在が示唆されている。ヒト固形腫瘍細胞における幹細胞マーカー発現の意義を、腫瘍関連間質の形成能力という面から検討していくために、平成21年度は以下の解析を行った。 1. CD133陽性の大腸がん細胞株から、RNA干渉によってCDI33発現レベルを低下させた大腸がん細胞株を作製した。当該細胞はヌードマウス皮下において腫瘍形成能が低下し、さらに、足場非依存的増殖能の低下していた。 2. 腫瘍形成が低下した分子機序を解明するため、大腸がんでも発がん機序に深く関与するPI3K/AKT経路の活性化を検討した。その結果、CD133低下細胞株は、PI3K阻害剤によって容易に細胞死が誘導され、さらにPI3Kによって制御されるAKTはその酵素活性が低下していた。 3. AKTは、β-カテニンの核内移行を促進し、その転写誘導能を活性化することで、がん化を亢進する。CD133低下細胞株では、核内のβ-カテニン量が減少し、その転写活性化能も低下していた。β-カテニンの不活性化は大腸幹細胞の終末分化を引き起こすが、当該細胞でも、分化誘導が促進される結果が得られた。 本研究から、CD133はPI3K/AKT経路を経てβ-カテニンの活性化を制御し、その結果、腫瘍形成能力の賦与する可能性が示めされた(平成21年日本癌学会にて報告、投稿準備中)。
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