2009 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫の抗原多型と遺伝子重複による寄生適応機構の解明
Project/Area Number |
21790405
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤井 裕美 Osaka University, 微生物病研究所, 特任研究員 (60377124)
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Keywords | メロゾイト表面抗原 / 三日熱マラリア原虫 / 分子進化 |
Research Abstract |
マラリアはその制圧が求められている重要な感染症で、年間3-5億人が感染し、100万人以上が死亡している。マラリア感染の大きな特徴として防御免疫が容易に成立しない点が挙げられ、この現象にはマラリア原虫の抗原多型が深く関係している。そのため抗原多型の研究は、マラリア原虫の寄生適応機構の解明やワクチン開発、ひいてはマラリア制圧に繋がる。本研究では、抗原分子であるMSP-1(merozoite surface protein 1)とCSP(circumsporozoite protein)、赤血球侵入に関与するAMA-1(apical membrane antigen 1)の進化的特徴を明らかにし、マラリア原虫における宿主適応戦略を知る手がかりを得る事を目的とする。平成21年度は以下の研究を行った。 三日熱マラリア原虫とその近縁サルマラリア原虫の系統解析から、msp1に正の選択が強く働いた時期は、宿主であるアジアマカク類の適応放散の時期(約300-600万年前)と概ね一致する事が示された。また、多型解析からは、正の選択が働く領域やサイトは種で共通であるが、選ばれるアミノ酸は種によって異なり、多様化選択が働く事が示唆された。 CSPとAMA-1についても同様の解析を行うため、cspで1種、ama1で5種について塩基配列を決定し、データベースで利用可能な配列を加え、合わせて系統解析を行った。ama1では、msp1と同様に宿主の適応放散の時期に比較的強く正の選択が働く傾向が見られたが、cspでは同じ傾向は見られず、msp1,ama1とcspでは異なるタイプの選択圧が働く可能性が示唆された。
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