2010 Fiscal Year Annual Research Report
マラリア原虫の抗原多型と遺伝子重複による寄生適応機構の解明
Project/Area Number |
21790405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 裕美 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任研究員 (60377124)
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Keywords | スポロゾイト表面抗原 / 三日熱マラリア原虫 / 分子進化 |
Research Abstract |
マラリアはその制圧が求められている重要な感染症で、年間3-5億人が感染し、100万人以上が死亡している。マラリア感染の大きな特徴として防御免疫が容易に成立しない点が挙げられ、この現象にはマラリア原虫の抗原多型が深く関係している。そのため抗原多型の研究は、マラリア原虫の寄生適応機構の解明やワクチン開発、ひいてはマラリア制圧に繋がる。本研究では、マラリア原虫抗原分子と赤血球侵入に関与する分子の進化的特徴を明らかにすることで、マラリア原虫における宿主適応戦略を知る手がかりを得る事を目的とした。 スポロゾイト表面抗原分子であるCSP(circumsporozoite protein)と赤血球侵入に関与するAMA-1(apical membrane antigen 1)について進化学的解析を行い、amalでは、以前に解析を行ったmsplと同様に宿主の適応放散の時期に比較的強く正の選択が働く傾向が見られだが、cspでは同じ傾向は見られず、mspl,amalとcspでは異なるタイプの選択圧が働く可能性が示された。しかし、CSPには特定のアミノ酸モチーフの繰り返し配列が存在し、マラリア原虫の免疫回避機構に関与すると考えられた。重篤な症状を引き起こす熱帯熱マラリア原虫では、CSPの繰り返し配列が種内でほぼ一致しているのに対し、比較的マイルドな症状を示す三日熱マラリア原虫とその近縁サルマラリア原虫では、複数のアミノ酸モチーフの組み合わせで繰り返し配列が形成されていた。更に近縁サルマラリア原虫の中でも比較的宿主域の広いP.cynomolgiとP.knowlesiのCSPでは、種内でのアミノ酸モチーフの数・バリエーション共に数多く見られ、繰り返し配列によって多様な宿主からの免疫を回避する機構が発達した可能性が示唆された。
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