2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌CagAによる胃上皮細胞の極性破壊と細胞増殖の共役機構
Project/Area Number |
21790412
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
紙谷 尚子 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 助教 (40279352)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / 胃癌 / cagA遺伝子 / 上皮細胞極性 / 細胞増殖 |
Research Abstract |
cagA遺伝子を保有するcagA陽性ヘリコバクター・ピロリ菌感染は胃癌発症の危険率を有意に高める。本研究の目的は、CagAによる胃上皮細胞の極性破壊と細胞増殖をつなぐ分子機構を明らかにし、ピロリ菌感染から胃癌発症に至る分子機構を解明することである。これまでに、申請者の所属する研究室では、CagAが細胞極性制御のマスターレギュレーターであるPAR1bに結合し、そのキナーゼ活性を抑制することにより上皮細胞極性を破壊することを明らかにしている。さらに、CagAがE-cadherin/β-catenin複合体を不安定化することによりβ-cateninシグナルを活性化することを見いだしている。興味深いことに、β-cateninシグナル活性化に必要なCagAの責任領域はCagAのPAR1b結合領域(CM配列)と一致する。そこで本年度は、CagA-PAR1b相互作用とβ-cateninシグナル活性化の関連性を解析した。 PAR1bとE-cadherin/β-catenin複合体は、極性化上皮細胞において側方側(lateral)膜に共局在する。そこで、両者が物理的に相互作用する可能性を免疫沈降実験により検討した結果、両者の直接的な相互作用は認められなかった。次に、CagA依存的なβ-cateninシグナル活性化におけるPAR1bのキナーゼ活性の関与を解析した。TCF結合配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだTOPtkLuciferaseを用いてレポーターアッセイを行ったところ、CagA依存的なβ-cateninシグナル活性化は野生型PAR1bの過剰発現により抑制される一方、キナーゼ活性を保有しない変異型PAR1bによっては抑制されなかった。よって、CagAによるβ-cateninシグナル活性化においてCagAによるPAR1bキナーゼ活性の抑制が関与していることが示された。
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Research Products
(3 results)