2009 Fiscal Year Annual Research Report
ボルデテラ属細菌の産生する壊死毒の受容体分子の同定
Project/Area Number |
21790417
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福井 理 Osaka University, 微生物病研究所, 助教 (70397743)
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Keywords | ボルデテラ属細菌 / 細菌毒素 / 受容体 |
Research Abstract |
本年度は、ボルデテラ属細菌の産生する壊死毒Dermonecrotic toxin(DNT)の受容体の同定を目的として、架橋剤を使用した受容体のアフィニティー精製を試みた。リガンドとしてDNTのN末端側に存在する最少結合領域をペプチド合成し、架橋剤Sulfo-SBEDで標識した。この標識DNTをDNT感受性細胞である骨芽細胞株MC3T3-E1に様々な条件で反応させ、架橋された分子をMS解析で同定した。いくつかの分子が再現性よく検出されたが、現在までに機能的な受容体の同定には至っていない。可溶化の条件や架橋分子の検出方法などに改善の余地があり、さらなる検討が必要であると思われる。一方、アフィニティー精製の過程で、DNTが細胞外マトリクスに特異的に付着することを見いだし、DNTの効果的な作用機序の存在を示唆する結果を得た。DNTはファイブロネクチンを主体とする細胞外マトリクスのネットワークにpH依存的に付着し、環境中の毒素濃度の低下に伴って上清中に再び遊離することがわかった。さらに、遊離した毒素は活性を有していた。これらのことから、DNTが細胞外マトリクスにその活性を維持したまま一時的に保持され、そこから遊離した毒素が周辺に存在する感受性細胞に作用している可能性が考えられた。DNTは、Bordetella bronchiseptica感染症である"ブタ萎縮性鼻炎"で見られる鼻甲介骨萎縮(鼻曲がり)の原因因子として知られているが、その標的細胞である骨芽細胞は粘膜下織より深部に存在している。上記の成果より、感染局所において菌体で産生されたDNTの一部が、粘膜下織の細胞外マトリクスへの親和性を利用して深部に存在する骨芽細胞に効果的に作用している可能性が考えられた。
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Research Products
(1 results)