2010 Fiscal Year Annual Research Report
デングウイルス感染者個体内擬似種とその細胞嗜好性の解析
Project/Area Number |
21790444
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒須 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (70432432)
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Keywords | デングウイルス / ウイルス疑似種 / 多様性 / 感染性クローン / ウイルス感染症 / 蚊媒介性疾患 / ウイルス性熱性疾患 / フラビウイルス |
Research Abstract |
〈デングウイルス感染者個体内擬似種の性状・遺伝子配列解析〉デングウイルス感染者個体内擬似種の遺伝・系統学的解析のために、一次感染、二次感染それぞれの感染者血清からEnv領域の遺伝子配列解析を行った。その結果、2型デングウイルスでは一次感染者由来のウイルス遺伝子により広い多様性が観察された。一方、二次感染者由来のウイルス遺伝子は低い多様性を示した。これは二次感染時に中和能のない抗体による選択(抗体依存性感染増強)が起こったためと考えられた。しかし、これらウイルスの培養細胞での増殖性及びプラーク形成の解析から、ウイルス集団は完全な選択や淘汰を起こすのではなく、多様性を保持した集団としてヒトと蚊の間で流行しており、ウイルス疑似種のpopulation switchingが起こっていると推測された。これらの観察は、2型デングウイルスが容易には一次感染で症状を起こさず、二次感染でより重篤な感染を起こす臨床像と関連があると考えられた(論文投稿中)。臨床分離株から作成したデングウイルス感染性クローンを用いた解析により、デングウイルス遺伝子は容易に突然変異を起こしやすく、仮に欠損遺伝子を持つウイルスでも容易に完全な遺伝子に復帰することを観察し、報告した。変異しやすい性質を、日本脳炎ウイルスと比較し、解析中である。 〈新規のウイルス分離・解析方法の開発〉デングウイルス臨床分離株は培養細胞での増殖性が低く、従来の方法では継代によるウイルス遺伝子の変異誘発が危惧され、多様性解析には大きな障害であった。培養細胞によるウイルス分離効率を高めるために、デングウイルス、日本脳炎ウイルスタンパク質及び種々の宿主因子を発現した細胞でのデングウイルス産生について検討した。その結果、日本脳炎ウイルスの一部タンパク質がデングウイルス産生効率を高めることを観察した(論文投稿準備中)。
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