2009 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルス感染によるアポトーシスの分子機序の解明
Project/Area Number |
21790446
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
デン リン Kobe University, 医学研究科, グローバルCOE研究員 (40437497)
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Keywords | C型肝炎ウイルス / アポトーシス / ミトコンドリア |
Research Abstract |
C型肝炎ウィルス(HCV)は肝臓に慢性の炎症を起こし、高率に肝細胞癌を引き起こすが、その一方で、C型慢性肝炎患者の肝組織においては、肝細胞のアポトーシスの亢進が認められている。私は平成19-20年度科学研究費補助金若手研究(B)「C型肝炎ウイルス培養細胞感染系における細胞障害誘導機構の解明」において、HCVJ6/JFH1感染系を用い、HCV感染がBaxの活性化を引き起こし、ミトコンドリア障害を介してアポトーシスを誘導することを明らかにした(Deng et al., JVI, 2008)。そこで、本研究ではHCV感染によるBax活性化の分子機構及びHCV蛋白質の役割について詳細に検討し、以下の成果を得た。 1. HCV感染細胞において、c-Jun N-terminal kinase(JNK)のリン酸化(活性化)及びその下流であるc-Junのリン酸化(活性化)及び安定化が認められた。2. HCV感染によるBaxの活性化及びミトコンドリアへの移行は、JNK特異的阻害剤SP600125により抑制されることから、Bax活性化にJNK経路が重要であることが示唆された。3. HCV感染によるJNKとBaxの活性化、及びアポトーシス誘導は、抗酸化剤NACによって抑制され、ROS産生の関与が示唆された。4. HCV感染細胞において、p38のリン酸化(活性化)が一過性に起こるが、p38特異的阻害剤SB203580がBaxの活性化を抑制しないことから、p38の関与は低いと考えられた。5. HCV感染により、アポトーシス抑制kinaseであるERK1/2が活性化された。6. HCV感染細胞において、HCV coreタンパク質がアポトーシス抑制タンパク質Mcl-1と結合し、Mcl-1の機能抑制を介してアポトーシスを誘導することが示唆された。 以上の結果から、HCVは肝細胞に感染し、ミトコンドリアからのROS産生を亢進し、JNK活性化、Bax活性化を介して、アポトーシスを誘導することが明らかとなった。また、core蛋白質によるMcl-1の機能抑制の関与も示した。一方、HCV感染はアポトーシス抑制kinaseであるERK1/2を活性化し、細胞生存の方向にも作用することも見出した。HCV感染細胞の運命はpro-apoptoticシグナルとanti-apoptoticシグナルのバランスにより制御されていると考えられた。
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