2010 Fiscal Year Annual Research Report
(-)鎖RNAウイルスゲノム複製における極性制御メカニズムの解明
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21790447
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
入江 崇 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (70419498)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
(-)鎖RNAウイルスのRNA合成では、(+)鎖(ウイルスmRNA及びアンチゲノムRNA)と(-)鎖(ウイルスゲノムRNA)のRNA合成を適切に制御することが必要であるが、その仕組みについては古くから単純にゲノム両末端に存在する(-)及び(+)鎖RNA合成プロモーターの強度の違いとウイルスRNAポリメラーゼのRNA合成モードの変化(転写と複製モード)によるものであると考えられてきた。我々は、パラミクソウイルス科のセンダイウイルス(SeV)において、アクセサリー蛋白質の一つであるC蛋白質がウイルスRNA合成、特にウイルスゲノムRNAの極性を制御し、(+)鎖アンチゲノムを持った非感染性ウイルスと(-)鎖ゲノムを持った感染性ウイルスの産生を最適化していることを明らかにした(Irie,2008)。 本年度は、C蛋白質によるウイルスのRNA合成の制御が実際のウイルス生活環においてどのように起こっているのかを明らかにすること試みた。感染細胞での(-)及び(+)鎖ゲノム長RNAの合成を経時的に観察し、野生型ウイルスでは感染6~8時間後までは(+)鎖が(-)鎖に対し優位に合成されるが、これを過ぎると(-)鎖合成が逆転すること、一方でC蛋白質欠損ウイルスではこの変化が観察されず、(+)鎖が常に相対的に優位に合成され続けることを観察した。またC蛋白質欠損ウイルスでも、トランスにC蛋白質を補うことで(-)鎖合成が相対的に優位に変化した。また、SeVとは異なるラブドウイルス科に属する水庖性口内炎ウイルス(VSV)では、観察した期間にわたって(-)及び(+)鎖ゲノム長RNAの割合に変化は見られなかった。さらに様々な(-)鎖RNAウイルスの比較では、SeV型のものとVSV型のものが見られた。 SeV型では、感染早期とそれ以降の(-)及び(+)鎖ゲノム長RNA合成プロモーターの活性が、ウイルス蛋白質の経時的な蓄積により変化するが、一方のVSV型では、古典的な解釈どおり、各プロモーター活性に依存して一定の割合で(-)及び(+)鎖ゲノム長RNAが合成されると考えられた。
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Research Products
(9 results)