2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790462
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
広瀬 哲史 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10415276)
|
Keywords | Bcl11b / T細胞 / CD4 / CD8 / 胸腺 / 免疫学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
Rit1/Bcl11bはT細胞腫生成の抑制作用を指標に当研究室で単離、同定されたがん抑制遺伝子であり、転写抑制因子をコードしている。T細胞分化にも重要で、β-selectionに必須であることを既に報告している。Rit1/Bcl11bが細胞傷害性T細胞の分化にも重要であり、しかも、その遺伝子量や活性が強く影響していることを既に見出しているおり、ノックアウト(KO)アリルを持ったマウスの他、化学変異原ENUによって誘発したhypomorphic変異アリルを持つマウスや、条件欠損マウスの解析を進めている。その他、マウスの遺伝学的背景の違いについても解析を進めている。BALB/c系統では、Rit1+/KOでもCD8SPが減少していたが、B6系統ではRit1+/KOではCD8SPが減少しなかったが、条件欠損アリルと変異アリルの複合型ヘテロ接合体では、CD8SPの減少が認められた。このことは、CD8系列分化に必要なBcl11bの遺伝子量、活性が、マウスの遺伝的背景によって異なることを示唆する。主要な変異マウスについて、B6、BALB/c系統の両方への戻し交配を進めているところであり、概ね5代以上の戻し交配が完了した。 また、河本宏博士らと共同で、Bcl11bがT細胞系列への運命決定にも関与することを明らかにした。これと関連し、ヤツメウナギに存在するBcl11b様遺伝子が、Bcl111bのパラログ、Bcl11aであること、さらに、Bcl11b遺伝子は、軟骨魚類以上の脊椎性動物にのみ存在していることを明らかにした。この結果は、T細胞が軟骨魚類以上の脊椎性動物で存在するという事実と符合していた。この結果は、Bcl11b遺伝子の進化のみならず、免疫系の進化についても新たな知見を加えるものである。
|