2010 Fiscal Year Annual Research Report
舌を介した粘膜免疫誘導と経舌ワクチン開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
21790475
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (20372881)
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Keywords | 免疫学 / 粘膜免疫 / ワクチン / アジュバント |
Research Abstract |
マウスに抗原としてOVA、アジュバントとしてコレラ毒素(CT)を用い、マウスの舌に塗布した。一定期間後、血漿および粘膜分泌液中のOVA特異抗体価、各種臓器における特異抗体産生細胞数を測定し、また安全性に関する試験を行った。C57BL/6マウスの舌の上面または下面にOVAを100μgとCTを0,0.5,5μgを塗布した。血中のOVA特異的IgG抗体価はCT非投与群では低レベルであったが、CT投与群では高レベルで特異抗体が観察された。糞便抽出液中のOVA特異的IgA、IgG抗体もCT投与群で検出された。粘膜組織においてもOVA特異的IgG、IgA産生細胞がELISPOT法で確認できた。経口免疫を行ったマウスでの糞便抽出液中のCT-B特異的IgG、IgA抗体価は経口免疫群>舌下免疫群>経舌免疫群の順であった。免疫を行っていないマウスで生理食塩水を投与したマウスでのFAは51であったのに対し、20μgのCTを投与したマウスのFAは123でありマウスで下痢が誘導されることを確認した。経舌、舌下、経口免疫を行ったマウスでのFAは64、70、69であった。いずれも非免疫群と比較して有意に下痢を抑制できることが確認された。安全性試験では、経舌免疫と舌への筋注を行った群で検討した。5μgのCTを筋注した群では5日以内に全例で死亡し、0.5μgのCTを筋注した群でも1週間以内に約2割のマウスが死亡した。この時、急激な体重の減少と体温の低下が観察された。0.05μgのCTを筋注した群では1週間以内に死亡した例はなかったが、一時的な体重減少と体温の低下が見られた。経舌免疫群ではこれらの異常および死亡例は無かった。味覚試験では経舌免疫群で異常は見られなかった。舌にCTを塗布するだけでは安全性に問題は無いが、舌に傷などがある場合に副作用が起こる事が想定された。しかし、経舌免疫は粘膜免疫および全身免疫を誘導することが明らかとなり、より安全なアジュバントを使用する事で「舐める」ワクチンには可能性があると考えられた。
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