2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790480
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Research Institution | St.Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
和田 はるか 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70392181)
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Keywords | iPS細胞 / T細胞 / B細胞 / 造血前駆細胞 / 分化誘導 / リプログラミング |
Research Abstract |
造血の分子機構解析において、遺伝子欠損マウスの解析から得られる情報は非常に多い。一方で、欠損/変異させた遺伝子が生命維持に不可欠である場合も多く、造血機構の解析が可能となる前の段階で死亡してしまう例も少なくない。そこで、近年開発されたiPS細胞化技術を利用し、胎生致死マウスの細胞からiPS細胞を誘導し、in vitroあるいはin vivoにおいて血液細胞へと分化誘導し、欠損/変異遺伝子が造血へおよぼす影響について解析する方法論を着想した。 本研究では、まず野生型マウス胎仔より得られた線維芽細胞からiPS細胞を樹立した。レトロウイルスにより胎仔線維芽細胞に山中4因子の導入し、iPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞から造血細胞の分化誘導を試みたところ、T細胞への分化は効率よくみられたものの、B細胞への分化に抵抗性を示した。別個に樹立したB細胞由来iPS細胞でも同様の傾向が見られた。iPS細胞由来造血前駆細胞を精査したところ、B細胞分化のマスター転写因子の一つであるPax5の発現が認められなかった。Pax5の不発現は不完全なリプログラミングによるPax5プロモーター領域のメチル化が原因として考えられたが、Pax5プロモーター領域は低メチル化状態にあり、Pax5の不発現はPax5プロモーターの不活化によるものではないことが明らかとなった。一方で、iPS細胞由来造血前駆細胞において、iPS細胞化の際に導入したOct4の異所性発現がみられ、iPS細胞からの造血細胞分化に何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられた。 iPS細胞を医療応用しようとした際、iPS細胞化時に使用した因子、例えばc-Mycの再活性化はがん化の危険をはらんでいるとして問題となっている。iPS細胞から胎生致死となる欠損/変異遺伝子をもつ細胞からiPS細胞を作製し、その分化を解析したい場合においても導入遺伝子の再活性化によりiPS細胞の「本来の分化」が阻害されるなどの問題が生じる可能性があり、iPS細胞化の際の導入遺伝子がゲノム挿入されない方法によりiPS細胞を作製し、分化解析に使用する必要性があると考えられた。
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