2009 Fiscal Year Annual Research Report
Mst1欠損マウスにおける免疫細胞の接着異常による自己免疫疾患の発症機構の解明
Project/Area Number |
21790482
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
植田 祥啓 Kansai Medical University, 医学部, 講師 (90533208)
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Keywords | 自己免疫 / インテグリン / Mst1 / リンパ球の分化 / リンパ球の動態・接着 |
Research Abstract |
本研究者は加齢したMst1欠損マウスを解析することにより、自己免疫の症状が統計的に優位に起こることを示した。Mst1欠損マウスにおいては有意に膵臓・肝臓の白血球の浸潤が観察された。また、血清中の抗胃マイクロゾーム抗体、dsDNAに対する自己抗体が上昇していた。これらの自己免疫症状はT細胞特異的にMst1欠損マウスにおいても有意に起こるため、自己免疫症状の発症にT細胞が重要な役割をしていることが示された。末梢のリンパ組織では、加齢に伴ってエフェクター・メモリーT細胞の細胞数やサイトカイン特にIL-4やIFNgを産生するT細胞が増大していた。これらの現象から、本研究者はMst1欠損マウスにおいてはT細胞の寛容のメカニズムが破綻していると予測した。胸腺における胸腺T細胞の選択を検討するために、外来抗原であるOVAに特異的TCRトランスジェニック(Tg)Mst1欠損マウスと雄抗原HY特異的なTCR Tgマウスを作成したところ、OTIIやMst1欠損マウス、雌のHY特異的なTCR Tgでは、CD69+CD4+CD8-の数が減少し、Mst1欠損下において、正の選択の異常が示唆された。負の選択については現在検討中である。また、胸腺内のFoxP3+CD4+細胞が1/3~1/4程度に減少しており、胸腺における制御性T細胞の産生の異常も示唆された。制御性T細胞の抗原特異的なT細胞応答に対する増殖抑制機能を検討するために、OTII Mst1欠損マウスから制御性T細胞を単離して、抗原存在下でOTII T細胞、抗原提示細胞と共培養し、未感作OTII T細胞の抗原特異的増殖応答に対する抑制活性を測定したところ、正常な制御性T細胞に比べて、制御性T細胞抑制機能が1/3~1/4に低下していた。今後は、Mst1がどのようにしてこれらのT細胞寛容破綻を引き起こすのか、細胞の接着・動態異常の観点から詳細に検討する。
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