2009 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカイン制御シグナルDNA経口ワクチンによる炎症性腸疾患の新規治療法の開発
Project/Area Number |
21790489
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Research Institution | National Institute of Biomedical Innovation |
Principal Investigator |
辻村 祐佑 National Institute of Biomedical Innovation, 霊長類医科学研究センター, 研究員 (30512404)
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Keywords | 経口ワクチン / 炎症性腸疾患 / 粘膜免疫 / ウィルス様中空粒子 / DNAワクチン / SOCS分子 |
Research Abstract |
免疫異常に起因する疾患の制御は減少しているサイトカインの補充的投与や拮抗的に働くサイトカイン投与による抑制等が主に報告されてきた。本研究の意義はこれまでのコンセプトとは全く異なりサイトカインを制御する分子;Suppressor of cytokine signaling : SOCSの遺伝子をDNAワクチンとして用いることにある。また本研究ではワクチンの標的を消化器粘膜とし、経口投与により全身および粘膜に特異的な免疫反応を誘導する新たなデリバリーツールの可能性をE型肝炎ウィルス(HEV)のウイルス中空粒子(VLP)を用いて検討する。そこでDNAワクチンとしてのSOCSの利用性を検討するために、報告からSOCSが強く関与していることが示唆されているヒト炎症性腸疾患のマウスモデル、デキストラン硫酸ナトリウム誘導性腸炎(DSS腸炎)を用いて効果を評価した。経口ワクチンの作製(SOCS-DNAをHEV-VLPに封入(Gene. Ther. 11, 628)) (1) VLP-SOCSを経口投与したマウス、SOCS-DNAを腹腔内投与したマウスに3%DSS水を自由に飲ませ、腸炎を誘導させる。 (2) 経日的な体重測定および糞便(血便、下痢)の観察等により腸炎を評価。 (3) VLPの生体内での動態を検討するため、VLPにGFP発現DNAを封入し、経日的に組織を採取、FACS解析およびPCR解析を行った。 実験結果としては下記のことが確認された。 a. SOCS-DNAワクチンの腹腔内投与によりDSS腸炎が抑制され治療効果を示す可能性が見出した。 b. SOCS-VLP経口投与の方がSOCS-DNA腹腔内投与よりも高い治療効果を示した。 c. VLPの動態を確認すると腸管上皮および腸管膜リンパ節においてGFPが検出され、VLPが腸管にGFP-DNAを運ぶツールになること、そこできちんとDNAが発現することが確認された。 SOCSをDNAワクチンとして利用し、経口ワクチンとしてVLPをベクターとするというこれまでのコンセプトとは全く異なる新規遺伝子治療法の開発に本実験の結果がつながる可能性は十分に考えられた。今後はさらに詳細な機序を検討、追求するため細胞生物学的、分子生物学的実験を行う予定である。
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Research Products
(6 results)