2010 Fiscal Year Annual Research Report
患者受療行動を加味した適切な診療の質評価方法の研究
Project/Area Number |
21790514
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 尚弘 東京大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (10402851)
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Keywords | 診療評価 / 患者受診行動 / 診療報酬請求明細書 / 保険者機能 / 診療の質 / ヘルスサービス研究 |
Research Abstract |
近年標準医療の実施率を以て医療の質を評価する試みが始まっている。これらの評価は施設単位でデータを収集してその診療内容を吟味するのが通例であるが、患者の医療は単一の施設で完結するものではなく、複数の医療機関で行われることもあり、施設毎での評価は他施設で継続された診療行為を補足できない可能性がある。本研究は実際のデータを使用して、患者が複数の医療機関を受診した場合に単施設のデータのみで評価を行うことの、評価結果に対する影響を吟味することを目的とする。本年度は(株)日本医療データセンターの保有する8企業健保組合の診療報酬請求書データを許可を受け解析した。うち健康保険組合(総加入者数15万人)は2005年1月~2010年4月、5健康保険組合(総加入者数60万人)2008年1月~2010年4月までのデータがあり、組み合わせた。ここでは代表的な標準医療として、「70歳以下で乳癌に対して乳房温存手術が行われた時には術後放射線治療を行う」ことを取り上げた。対象患者より乳癌の病名で乳房温存手術が行われた患者は308名であった。このうち、術後6ヶ月以内に放射線療法(あるいは追加乳房切除術)が行われた割合は54%であったが、手術施設のデータのみが評価のために補足できたと仮定した時の同標準実施率は40%と大きく差があった。これは、この2つの治療を受けた患者のうち同一の施設で行われたのは74%だったことによる。手術と化学療法を組み合わせる標準治療は通常対象患者が特定の病期であり診療報酬明細書データだけでは、対象患者を特定することは不可能だが、手術と術後化学療法が同一施設で行われる割合は、大腸癌、胃癌で95%、肺癌で80%と概ね高いため、複数施設受診による捕捉が問題になる程度は今回例示した乳癌術後放射線療法よりも軽いと考えられるが、同様の注意が必要であると考えられる。
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Research Products
(4 results)