2009 Fiscal Year Annual Research Report
アニオン性薬物のヒト胎盤透過に関わる分子機構の解明
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21790518
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 宏樹 The University of Tokyo, 大学院・薬学系研究科, 助教 (80451855)
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Keywords | 薬物胎盤透過 / アニオン性薬物 / トランスポーター / 非ステロイド性消炎鎮痛薬 / トロホブラスト細胞 |
Research Abstract |
本研究では、薬物の胎児移行性を予測するためのin vitro評価系を確立することを目指し、アニオン性薬物の胎盤透過における薬物輸送担体(トランスポーター)の関与を明らかにすることを目的とした。本年度はまず、ヒト胎盤より単離したトロホブラスト細胞を4日間初代培養することで融合・多核化(シンシチオ化)させ、生体内のトロホブラスト細胞を模した系を構築した。続いて、アニオン性薬物として非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を選択し、シンシチオ化トロホブラスト細胞における輸送特性を解析した。シンシチオ化トロホブラスト細胞へのNSAIDs(サリチル酸、ケトプロフェン、イブプロフェン)の取り込みはプロトン勾配依存的、濃度依存的であった。次に、モノカルボン酸トランスポーター(MCTs)、有機イオントランスポーター(OATs)、有機アニオントランスポーター(OATPs)の基質や阻害剤が各NASIDsの取り込みに及ぼす影響を検討したところ、L-乳酸(MCTs基質)およびプロベネシド(MCTs、OATs阻害剤)によって阻害されたが、CHC(一部MCTsの典型的阻害剤)やOATs、OATPsの基質・阻害剤によっては阻害されなかった。そこで、シンシチオ化トロホブラスト細胞おけるMCTsアイソフォームの発現をRT-PCR法により解析したところ、MCT1、MCT4、MCT5、MCT7、MCT8がトロホブラスト細胞で発現していることが明らかとなった。以上のことから、シンシチオ化トロホブラスト細胞における各NSAIDsの取り込みはトランスポーターを介していることが示唆され、少なくとも一部にはMCTsが関与している可能性が考えられた。
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