2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳細胞の興奮・活性化状態を制御するTRPVチャネルの新たな病態生理学的役割の解析
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21790519
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白川 久志 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50402798)
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Keywords | TRPチャネル / 中枢神経変性疾患 / ミクログリア / 脱分極 / TRPV4 / 外向き整流性K^+チャネル / 電気生理学 |
Research Abstract |
脳の免疫担当細胞であるミクログリアは脳内環境の恒常性維持を担うが、その一方で病的な刺激により活性化することで中枢神経変性疾患の病態形成に関与することが明らかになりつつある。近年、ミクログリアの活性化過程におけるイオンチャネル動態の重要性が提唱されてきたが、カチオン流入経路の一つと考えられるTRPチャネルの関与についてはほとんど明らかになっていない。そこで本年は、脳細胞のうちミクログリアに着目し、TRPVチャネルを介したイオン流入がミクログリアの異常活性化にどのような影響を及ぼすかについて、特に浸透圧変化や温和な熱、機械伸展刺激等で活性化するTRPV4チャネルに着目して詳細に解析した。実験には生後1-2日齢のWistar/ST系ラット新生仔大脳皮質より調製したミクログリアを用いた。RT-PCR法、免疫染色化学および電気生理学的測定によりラット初代培養ミクログリアにおいてTRPV4が機能的に発現していることを明らかにした。In vitroおよびin vivoの両検討により、lipopolysacch興ride(LPS)により惹起される各種ミクログリア活性化指標(TNF-α遊離、galectin-3発現、iba-1免疫陽性増大、外向き整流性K^+チャネル電流)の増大は、LPSと同時にTRPV4アゴニストである4αPDDを処置することにより抑制されることが明らかになった。また、培養ミクログリアに4αPDDを適用することにより膜電位の軽度な脱分極が観察され、持続的な4αPDD処置はCa^<2+>利用能の減弱をもたらした。高濃度KCI溶液を用いた脱分極刺激もまた、各種LPS誘発ミクログリア活性化指標を減弱したことから、4αPDDの抑制作用を模倣したと想定された。以上の結果より、TRPV4開口刺激は細胞膜の脱分極を介してミクログリアの活性化に対して抑制的に働くことが明らかになった。
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