2009 Fiscal Year Annual Research Report
胃がんにおけるPI3K経路活性化機構の解明とキナーゼ阻害薬の個別化治療への応用
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21790522
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向原 徹 Kobe University, 医学部附属病院, 特命准教授 (80435718)
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Keywords | シグナル伝達 / 個別化治療 / 胃がん / PI3K |
Research Abstract |
現在までに、4種類の胃がん細胞株(KATO-III, MKN-1, MKN-45, MKN-7)と4種類の乳がん細胞株(MDA-MB-231, MDA-MB-361, MDA-MB-435, MDA-MB-453)について、Met, PDGFR, VEGFRの多標的阻害薬であるGSK1363089とPI3K/m-TOR阻害薬であるBGT226の細胞増殖抑制効果をスクリーニングした。8細胞株中MKN-1、MDA-MB-361、MDA-MB-453はPIK3CAの活性化変異を有したが、PTENの異常はいずれの細胞にもみられなかった。GSK1363089に高感受性を示したのは、KATO-III (Met-amplified, FGFR2-amplified)およびMKN-45(Met-amplified)細胞株のみであった。8細胞株はいずれもBGT226には高い感受性を示した。次に、GSK1363089、PD173074(FGFR2阻害薬)、PHA665752(Met阻害薬)の、受容体と細胞内シグナルへの影響をphospho-RTK (receptor tyrosine kinase) arrayとWestern blot法を用いて検討したところ、GSK1363089はMKN-45ではMetを抑制し、さらに受容体間cross-talkを介してFGFR3とEGFRファミリー受容体およびPI3K経路を抑制することが分かった。一方KATO-IIIでは、GSK1363089の効果はMetを介さず、FGFR2から受容体間cross-talkを介してMetやEGFRファミリー受容体およびPI3K経路を抑制することが分かった。要約すると、新規多標的阻害薬であるGSK1363089の効果は、MetまたはFGFR2の遺伝子増幅を有する細胞に限られ、複数の受容体間cross-talkを介してPI3K経路を抑制することが重要な作用メカニズムであることが示唆された。これは同剤の個別化治療に向けた臨床試験を計画するにあたり、極めて重要な情報である。一方、PIK3CA遺伝子変異がGSK1363089の耐性機構となっているかは現時点では明らかではない。また、当初PIK3CA遺伝子変異はBGT226への感受性規定因子となると仮説を立てていたが、現時点ではその意義は低いことが示唆されている。
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