2010 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤性肝傷害に著効を示すオザグレルの作用機序解明および新規治療戦略への展開
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21790524
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
石塚 洋一 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (70423655)
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Keywords | オザグレル / トロンボキサンA2 / アセトアミノフェン / 肝傷害 / 有害事象 |
Research Abstract |
本研究は、発生率の最も高く今後更なる発症数の増加が懸念されるアセトアミノフェン誘発肝傷害の新規治療法開発を企図し、申請者がトロンボキサンA2(TXA2)合成酵素選択的阻害薬オザグレルの卓越した抑制効果を見出したことを糸口とし、アセトアミノフェンをはじめとした重篤な薬剤性肝傷害における新規病態関連因子・治療薬候補の探索を目的に検討を行ってきた。C57BL/6Nマウスアセトアミノフェン肝障害モデルにおいて、血清ALT値の上昇、小葉中心性壊死、肝実質細胞空胞化およびDNA断片化を指標に評価した結果、オザグレル塩酸塩投与により卓越した肝傷害抑制効果が確認され、その効果は現在アセトアミノフェン肝傷害への唯一の治療薬であるN-アセチルシステインより優れていた。さらに、アセトアミノフェン投与数時間を経過した後にオザグレルを投与してもその効果は発揮されたことから、治療的効果を有することが示唆された。(特許出願済み、投稿準備中)57BL/6Nマウスアセトアミノフェン肝障害モデルにおいて、アセトアミノフェン投与の4-8時間後に顕著なトロンボキサンA2産生の亢進が確認され、これに対しオザグレルはほぼ完全に抑制したが、他のトロンボキサン合成酵素阻害薬、トロンボキサン受容体拮抗薬の効果はオザグレルほど顕著でなく、オザグレルの肝傷害抑制効果には他の機序が関係すると思われた。アセトアミノフェンやオザグレルを投与したときの遺伝子発現を網羅的に解析するためGeneChipアッセイを行った結果、アセトアミノフェン投与により数種のアポトーシス関連遺伝子の顕著な発現亢進が確認され、これに対しオザグレルはほぼ完全に抑制したことから、オザグレルの肝傷害効果にはトロンボキサン合成酵素阻害以外にアポトーシス関連遺伝子発現抑制作用が関与している可能性が示唆された。 以上の結果より、オザグレルは新規機序により薬剤性肝傷害に対し著効を示す治療薬候補となりうることが示唆された。
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Research Products
(2 results)