2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790526
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
西奥 剛 福岡大学, 薬学部, 助教 (90435115)
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Keywords | 白質障害 / 関節リウマチ / 血液脳関門 |
Research Abstract |
生物学的製剤による分子標的治療は、関節リウマチの治療に新展開をもたらした。しかし、その優れた有効性の反面、副作用も多様で薬物治療上大きな障壁となっている。重篤な副作用に白質脳症(脱髄疾患)があるが、その発症機構については不明である。本研究は、生物学的製剤によって誘発される白質脳症の発症機序を明らかにし、生物学的製剤による中枢性副作用発現の予測・回避策の基盤を提示する。関節リウマチ患者は、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが有意に高く、その背景として血管内皮障害が挙げられる。関節リウマチにおける脳血管内皮障害は、脳梗塞の発症リスクを上昇させ、また、血液脳関門(BBB)機能の脆弱化による治療薬物の中枢有害作用発現の危険因子ともなる。そこで、関節リウマチのモデル動物としてコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスを使用しBBB機能障害について解析を行った。CIAマウスでは、Na-F脳内蓄積量が有意に増加し、TJsタンパク質occludinの発現量は減少していた。これらの結果から、CIAマウスのBBB機能は障害されていることが判った。次に、関節リウマチ病態下においてBBB機能障害を惹き起こす因子について、関節リウマチ患者において発現増加するS100A4に着目し解析を行った。CIAマウスにおいてBBB機能障害と血清中S100A4濃度に強い相関が認められ、関節リウマチにおいて発現増加するS100A4がBBB機能障害に関与する可能性が示唆された。また、S100A4は脳血管内皮細胞透過性を有意に亢進させ、occludinの発現量を減少させた。関節炎症病態において発現増加するS100A4が、脳血管内皮細胞に作用し、occludinの発現を減少させ、脳血管透過性を亢進させることが示唆された。以上、本研究は、関節リウマチにおけるS100A4の増加がBBB機能を脆弱化させることを示唆する実験証拠を提示し、関節リウマチの薬物治療における白質脳症の発症に関与する可能性を示唆するのである。
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