2010 Fiscal Year Annual Research Report
乳癌治療の個別化におけるがん幹細胞の同定の有用性に関する研究
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21790536
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
枝園 忠彦 岡山大学, 岡山大学病院, 助教 (30509451)
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Keywords | がん幹細胞 / 乳癌 / 予後因子 / 転移 |
Research Abstract |
1.乳癌肺転移におけるALDH1陽性がん幹細胞の発現の検討 (結果1)乳癌肺転移に対して、肺切除を施行した17例において原発巣と肺転移巣におけるALDH1陽性がん幹細胞の発現はそれぞれ57%と64%であった。また両者の間でのALDH1およびエストロゲンレセプター(ER)、ヒト増殖因子受容体2(HER2)の発現の一致率を検討したところ50%,79%,100%とALDH1ではほかの2つの因子と比べて非常に低かった。このことから、転移巣のALDH1発現の有無は原発巣の状況だけでは予測できない可能性が示唆された。 (結果2)肺切除を行った乳癌肺転移症例における生存期間中央値は48ヶ月であった。既知の予後因子に加えてALDH1の発現のこれらの症例における予後との相関を検討したところ、ERの発現、原発巣におけるALDH1の発現および原発巣におけるKi67の発現が有意な予後因子であった。このことから、肺転移症例において肺転移巣を積極的に切除する意義はそれほど高くない可能性が示唆された。 2.再発乳癌の剖検例における乳癌転移巣のALDH1陽性細胞の発現の検討 (結果1)乳癌再発により死亡した後、剖検を行った28例において肝転移、肺転移のALDH1陽性細胞の発現頻度は35%、43%であった。原発巣での発現率は25%であり両者の一致率は62%であった。転移巣および原発巣におけるALDH1陽性細胞の発現の予後との相関は肝転移巣におけるALDH1発現が生存期間における有意な予後因子だった。 (結果2)同様の症例において既知の予後因子であるHER2、Ki67に関して原発巣と転移巣の発現の一致率は92%、73%でありこの結果から、再発乳癌の個別化のための薬剤選択には転移巣の組織を調べることが有用である可能性が示唆された。
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