2010 Fiscal Year Annual Research Report
猫ひっかき病原因菌Bartonella henselaeの分子疫学的研究
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21790538
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳原 正志 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (40379954)
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Keywords | 猫ひっかき病 / Bartonella henselae / Multispacer typing (MST) |
Research Abstract |
Bartonella henselaeは猫ひっかき病(cat scratch disease : CSD)の原因菌である。本年度はmultispacer typing (MST)法によるB.henselaeの分子系統解析を行い、わが国での本菌の遺伝子型の分布について検討を行った。全国から集められたCSD患者由来B.henselae 25例(心内膜炎患者由来分離株1株、CSD患者臨床材料より直接抽出したDNA24例)とネコ由来分離株31株の計56例を対象に、ゲノム中の9箇所のintergenic spacer配列をダイレクトシークエンスにて読み、遺伝子型(MST genotype)を決定した。その結果、56例のB.henselaeは13種類のMST genotypeに分類され、このうち7種類(MST genotype 51~57)は新規の遺伝子型であった。CSD患者由来25例は9種類のMST genotypeに、ネコ由来31株は10種類のMST genotypeにそれぞれ分類された。両者においてMST genotype 14 (36% ; 20/56)とMST genotype 35 (23% ; 13/56)が主要な遺伝子型であった。本研究で得られた新規のMST genotypeと既知の50種類をもとに分子系統樹解析を行ったところ、今回得られた13種類のMST genotypeのうち、12種類が1つの系統(cluster 1)に属し、残る1種類はMST genotype 52のネコ由来2菌株でcluster 4に属していた。これまでに欧米では標準菌株のHouston-1株やMarseille株が属するcluster 2やcluster 3のB.henselaeによるCSDが報告されているが、本研究結果から、わが国ではcluster 1のB.henselaeが主に分布し、CSDの原因となっている実態が明らかになった。また、MST法と昨年度に実施したMLST法による同一菌株群の解析結果を比較すると、MST法の方が菌株識別能に優れていた。MST法はB.henselaeの分子疫学に有用な解析法の一つである。
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