2010 Fiscal Year Annual Research Report
尿細管および腸管上皮細胞におけるヒ素化合物の吸収と代謝動態に関する研究
Project/Area Number |
21790558
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
畑 明寿 千葉科学大学, 危機管理学部, 助手 (10433690)
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Keywords | arsenic / speciation / bioloical monitoring / seafood / occupational exposure / well water / creatinine adjusted / renal tubule |
Research Abstract |
【研究目的】現在スポット尿を検体としたヒ素曝露バイオモニタリングでは、尿量補正のためヒ素濃度のクレアチニン補正が慣例的に行われているが、尿細管において様々なヒ素化合物がクレアチニンと同じ挙動を示すことは証明されておらず、補正の有効性を検証する必要がある。今年度は尿細管でのヒ素の再吸収を確認するための基礎検討として、尿細管上皮モデルを用いた膜透過性試験を実施した。 【実施内容】尿細管上皮モデルにはMDCK細胞をトランスウェル上に培養したものを用いた。実験に供したヒ素化合物は5価及び3価の無機ヒ素、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸、トリメチルアルシンオキサイド、アルセノコリン、アルセノベタインの7種とした。これらヒ素化合物と共に尿素とクレアチニンを尿細管上皮モデル膜の管腔側に添加し、3時間後に基底膜側の培養液を回収した。培養液中のヒ素検出及び化学形態分析はHPLC-ICP-MSを用いた。 【研究成果】膜透過性試験の結果、7種のヒ素化合物のPapp値は1.6~3.4×10^<-6>cm/secの範囲となった。また尿素とクレアチニンの値はそれぞれ、7.38と1.33×10^<-6>cm/secとなった。ヒ素の透過性を尿素およびクレアチニンと比較したところ、ヒ素の透過性は尿素の0.2~0.4倍、クレアチニンの1.0~2.5倍であった。また透過したヒ素化合物の化学形態分析の結果、今回試験を行った7種は試験後も化学形態に変化は見られなかった。以上の結果より、今回実験に供したヒ素化合物はMDCK細胞の単層膜をクレアチニンと同等から2.5倍程度透過することが判明した。従って実際の尿細管においても再吸収を受ける可能性があるものの、その吸収動態は比較的クレアチニンに近いという可能性が示唆された。今後、より生体に近い条件で検証を進める必要があるといえる。
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Research Products
(2 results)