2010 Fiscal Year Annual Research Report
カドミウム誘導性発癌における、マトリックスメタロプロテアーゼの役割の解明
Project/Area Number |
21790560
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
西躰 元 独立行政法人理化学研究所, 自然免疫研究チーム, 研究員 (60509941)
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Keywords | 衛生 / 癌 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 免疫学 |
Research Abstract |
カドミウムによる発癌の分子メカニズムについては不明な点が多い。我々は、まずマウス胚性幹(ES)細胞においてカドミウム曝露をすることにより、MMP9、MMP13 mRNAの発現上昇が起こることを見出した。MMPは癌の転移および血管新生において重要な役割を果たすと考えられており、カドミウムが発癌を促進する遺伝子発現に関与する可能性が考えられた。次にin vivoのカドミウム誘導性発癌においてもMMPの発現上昇が見られるかを調べるため、前段階として既存のマウス腫瘍形成モデルを用いて検討した。B16メラノーマ細胞をマウスに移植し、皮下に腫瘍を形成させた。次に腫瘍よりMMP産生細胞の単離を行った。腫瘍形成時、腫瘍と共に存在するマクロファージがMMPを産生し、血管新生や転移を促進することで腫瘍細胞の増殖を助ける可能性が近年報告されている。そこで腫瘍に存在するマクロファージが主なMMP産生細胞である可能性を考え、切除した腫瘍よりCD11bマイクロビーズを用いて腫瘍マクロファージを単離した。次に単離した腫瘍マクロファージに対して10μMのカドミウムを曝露し、24時間後RNAを回収し定量PCRによりMMP発現を調べた。腫瘍における発現が報告されているMMP2、3、7、8、9、10、13、14、19、21、28を調べた結果、MMP8、9、13、14、19の定常状態における発現が見られたものの、カドミウムによる発現上昇は見られなかった。一方でチオグリコレート誘導腹腔マクロファージに対して1μM、10μMのカドミウムを曝露し、上記MMPの発現を調べたところ、MMP8、9、13、14の定常状態における発現に加え、MMP19のカドミウム濃度に応じた発現上昇が認められた。以上より、マクロファージのカドミウム応答性MMP発現には組織特異性があることが示唆された。
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