2010 Fiscal Year Annual Research Report
職業性ストレスによる心血管疾患発症機序の解明:マルチバイオマーカーを用いた検討
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21790561
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
大塚 俊昭 日本医科大学, 医学部, 講師 (80339374)
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Keywords | 職業性ストレス / 心血管疾患 / バイオマーカー / ナトリウム利尿ペプチド |
Research Abstract |
職業性ストレスによる心血管疾患リスク上昇にかかる機序を解明するため、本年度は、東京都内の某IT企業において定期健康診断を受診した社員268人(平均39才、男性226人)を対象に、自己記入式職業性ストレス調査(職業性ストレス簡易調査)および、心血管関連生化学的バイオマーカーの測定を行った。職業性ストレスは、仕事の量(job demand)と裁量権(job control)に関するストレスを評価し、demandが高くcontlorの低い状態をjob strainと定義した。生化学バイオマーカーは、心臓ストレスマーカーであるNT-proBNP、酸化ストレスマーカーであるMDA-LDLおよび炎症マーカーhsCRPを測定した。各マーカーとも、job demandとjob strainとの間に統計学的な関連性は認めなかったものの、job controlとNT-proBNPとの間に有意な負の相関を認めた(r=-0.13,p=0.036)。この結果は、仕事に対する裁量権が低い(ストレスが高い)社員においてNT-proBNP値が低値であることを意味する。NT-proBNPは、ナトリウム利尿ペプチドの1種であるBNPの産生過程で生じる物質であるが、近年の報告では、脳内にナトリウム利尿ペプチドに対する受容体が存在し、ナトリウム利尿ペプチドがストレス伝達系である視床下部-下垂体-副腎皮質系を抑制する働きを持つ可能性が指摘されている。したがって、本結果から、BNP(NT-proBNP)低値を認めるものは、この伝達系の抑制が不十分となり、職業性ストレス、とくに仕事の裁量権低下に関わるストレスに対する自覚閾値が低下している可能性が考えられた。
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