2011 Fiscal Year Annual Research Report
職業性ストレスによる心血管疾患発症機序の解明:マルチバイオマーカーを用いた検討
Project/Area Number |
21790561
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
大塚 俊昭 日本医科大学, 医学部, 講師 (80339374)
|
Keywords | 職業性ストレス / 動脈硬化 / バイオマーカー / 上腕動脈 |
Research Abstract |
本年度は、心血管疾患に関する生理学的指標と職業性ストレスとの関連性を検討するため、血圧脈波検査装置を用い、上腕動脈の動脈硬化指標の測定と職業性ストレス調査を神奈川県内の半導体製造工場の従業員440人(38±9歳、男性404人)を対象に行った。 血圧脈波検査装置(ヘルスクロノスTM-2771)を用い、上腕動脈における動脈硬化の指標であるVE (Volue elastic modulus)およびdAMax(Maximum delta of vessel area)を測定した。VEとdAMaxは弱い正相関を示し(r=0.21,p<0.001)、両指標とも年齢と有意な正相関を示した(供にr=0.27,p<0.001)。2012年度の定期健康診断における生活習慣病をはじめとする各種臨床検査指標との関連性を重回帰分析で検討したところ、VEを規定する因子は年齢および脈拍数であり、dAMaxを規定する因子は年齢、BMI、脈拍数、収縮期血圧、および空腹時血糖であった。 つぎに、両動脈硬化指標と職業性ストレス簡易調査票項目(57項目)との関連性を検討した。動脈硬化指標は年齢と有意に相関するため、年齢で補正した相関(偏相関)を求めたところ、仕事の要求度(非常にたくさんの仕事をしなければならない、高度の知識や技術が必要な難しい仕事だ)が高く、仕事の裁量度(自分で仕事のやり方を決めることができる)が低いほどVEは高値(悪化)を示した。また、ストレスに伴う自覚症状では、「怒りを感じる」「仕事が手に付かない」「胃腸の具合が悪い」ほどVEは高値を示した。一方、dAMaxは職業性ストレス調査項目と有意な相関は示さなかった。また、両指標とも、職場や家族とのコミュニケーションに関する質問項目との有意な関連性は認めなかった。 以上から、上腕動脈の動脈硬化指標において、VEの測定は仕事の要求度が高く裁量度が低いいわゆる高ストレイン状態を反映する指標となる可能性が示された。また、ストレスにともなう自覚症状によっても動脈硬化指標が悪化する可能性が示唆された。
|
Research Products
(2 results)