2010 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト農村部における女性の住血吸虫症に対する効果的な健康教育に関する研究
Project/Area Number |
21790577
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 レオ 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (70508895)
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Keywords | 住血吸虫症 / 女性の健康 / 感染症対策 / エジプト / 健康教育 / 行動変容 |
Research Abstract |
エジプトでは、80年代に始まった国家住血吸虫症対策プログラムにより、近年住血吸虫症の罹患率が劇的に低下している。しかし、就学率の低い女児や、保健サービスへのアクセスが十分でない女性に対する対策は必ずしも十分でなく、また、女性生殖器住血吸虫症などの女性特有の病態もあることから、本症を女性の健康問題として捉えることは重要である。本研究では、エジプトの農村住民に対するフィールド調査を通して、効果的な住血吸虫症対策のための要件について、社会疫学的に分析を行う。 22年度は、エジプト南部のソハーグ県にて調査を行った。県内の農村2箇所において、成人女性231名および男性149名に対する面接調査を行い、本症の症状や予防等に関する住民の認識の程度、日常生活上の感染リスク行動(用水路での作業等)の詳細などについて情報を収集した。症状や感染経路に関する知識に関しては、9割以上の住民が正しく回答していた。一方、女性の20%、男性の34%は恒常的に感染リスク行動に行っていると回答し、女性の場合、洗濯や農作業に伴う河川・用水路の水との接触が感染のリスクであることを認識しているにもかかわらず、予防行動を起こさない(起こせない)ことが明らかになった。予防行動を起こさない最大の理由は「他に選択肢がない」ためであり、健康教育のみでは感染症予防に関する行動変容に結びついていないことが示された。本症が生殖器病変や不妊に関連することを知っていると回答した者は30%以上にのぼり、住民の間で、本症が「女性の健康問題」としても認識されつつあるが、住民の予防行動への行動変容を促進するためには、前提となる選択肢を与えることが必要であり、インフラ整備や貧困対策が重要である。健康教育においても、テレビ等を用いた本症に関する知識の普及だけでなく、女性住民の行動変容を促進させる効果のある方法の開発が重要である。
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