2010 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナムにおける小児肺炎発症の社会環境的リスク因子の量的・質的探究
Project/Area Number |
21790585
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿部 朋子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 研究員 (70361368)
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Keywords | 急性呼吸器感染症 / 小児肺炎 / ベトナム |
Research Abstract |
発展途上地域における小児肺炎の高い死亡率は世界的に大きな課題であるが、その実態はまだ十分に把握されていない。特に環境因子が発症に強く影響すると考えられている小児肺炎の場合、文化的、社会経済的要因を背景とした、母親あるいは保護者の受療行動が小児肺炎の症状や予後に大きな影響を及ぼすと考えられるが、詳細な実態はいまだ明らかでない。 本研究は、ベトナム中南部カンホア県都市部における小児呼吸器感染症の社会的・経済的・文化的リスク因子を明らかにすること、小児呼吸器感染症の医療機関受診行動パターンを明らかにすることおよび家庭における、小児呼吸器感染症に対する疾病理解と、疾病行動を規定する社会的、文化的因子を明らかにすることを目的として実施した。 本年度は予備調査結果を踏まえて聞き取り項目・内容を検討し、本調査にてベトナム・カンホア県ニャチャン市のカンホア県病院小児科に急性呼吸器疾患で入院した児の母親あるいは保護者200名に対する受療行動を中心とした聞き取り調査、および地域の病院、保健所、薬局の医療スタッフ10名に対する小児の呼吸器疾患の治療方針、使用薬の詳細等に関する聞き取り調査を実施した。患者の約半数は1~5カ月の乳児であり、直接世話をするのは母親がほとんどであった。児の呼吸器症状発症時はクリニックなど医師のいる医療機関を受診していたが、1か所目で適切な治療を受けられず、2または3か所目で県病院を受診し、その間に重症化してしまっているケースも散見された。抗生物質を自宅に保管したり自己判断で使用する者は少なかったが、費用がかかるために十分な期間服用できておらず、重症化の要因になっていると考えられた。一方抗生物質の供給側である地域の医療従事者への聞き取り調査では、ガイドラインに従った治療を実施しているという回答がほとんどであったが、これについてはより詳細な調査が必要であると思われた。
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