Research Abstract |
アラル海縮小に関わる環境問題は,20世紀最大の環境破壊とも言われ,周辺住民のEcologicai Diseaseと総称される様々な健康障害が報告されてきた.近年,そうした健康問題の改善に対して,教育による予防的な介入の必要性と可能性が指摘されている.オタワ憲章以来,健康問題の改善に対して保健医療分野を超えた包括的な取り組みが必要であるとの認識が広がり,特に,子供を対象とした健康対策を講じる際には,「保健」と「教育」とが一体となって活動する学校保健プログラムが費用対効果の高い手段の一つされている. しかしながら,アラル海周辺では,そのようなプログラムは行われておらず,同地域で活動する医療・教育関係者から,本研究課題への取り組みが強く望まれてきた. そこで,本研究では,アラル海周辺地域における持続可能な包括的学校保健プログラムの開発を行うことを目的として,平成21年度は,カザフスタン共和国において,1.学校保健政策・計画の基礎的調査,2.子供の健康知識習得状況・健康度調査,3.持続可能な包括的学校保健プログラムの立案に関する検討会を行った. その結果,現在同国は,教育制度の改変を計画し,それに伴って教科の再編を検討していた.健康教育科目は,Валеологияが初等中等教育のすべての学年に選択科目として位置づけられているが,その実施率が年々低下傾向にあること,他教科・プログラムに含まれる健康に関する内容を統合した科目Здоровьеижизненные навыкиが開発され,試験的に実施していることが明らかとなった.また,健康教育科目実施校と非実施校で子供の健康知識および健康度を比較する調査が行われ,健康知識と健康度に有意な差が認められた.有識者による検討会では,不足していることに加えて,担当教師の養成確保,学力論との兼ね合い,保護者の理解等の問題が指摘された.
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