2010 Fiscal Year Annual Research Report
地域高齢者における生活機能と認知機能の相互作用的関係に関する長期追跡調査
Project/Area Number |
21790594
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩佐 一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (60435716)
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Keywords | 地域高齢者 / 生活機能 / 認知機能 / 相互作用的関係 / 縦断調査 |
Research Abstract |
【目的】地域高齢者の生活機能と認知機能の関連に関する縦断研究より、認知機能が生活機能低下の予測因子であることが明らかとなっているが、生活機能と認知機能の因果関係のより詳細な検討が課題として残されている。そこで本研究では、応募者が平成13年度に実施した、地域高齢者を対象とした地域調査から8年後の追跡調査を行い、(1)地域高齢者における生活機能及び認知機能の長期的な経年変化の実態把握、(2)生活機能と認知機能の相互作用的関係の検討を行った.【方法】平成13年度に東京都A区の地域高齢者を対象として実施したベースライン調査に参加し、平成21年7月1日時点で同区に居住している者320名(平成13年時点で70~84歳)を対象として8年後の追跡調査(訪問調査)を実施した。高次生活機能(老研式活動能力指標),認知機能(Mini-Mental State Examination)、調整変数として性別、年齢、教育年数、抑うつを聴取・測定した。事前に十分な訓練を受けた調査員を高齢者宅へ派遣し、面接形式で調査を行った。【結果と考察】高次生活機能における平均値(ベースライン,追跡)は11.9±1.4,10.9±2.7,MMSEにおける平均値は28.4±2.0,26.7±3.4であった.認知機能と生活機能の因果関係について検証するため重回帰分析を行った.(A)「認知機能(ベースライン)を説明変数,生活機能(追跡)を目的変数」とする重回帰分析を行ったところ認知機能の寄与が有意であった(β=0.26,p<0.01).逆に,(B)「生活機能(ベースライン)を説明変数,認知機能(追跡)を目的変数」とする重回帰分析を行ったところ生活機能の寄与は有意でなかった(β=0.01,ns).上記より,8年間の長期的追跡調査を行った結果,認知機能と生活機能の因果関係は,「認知機能が生活機能に及ぼす影響」のみ認められ,逆方向の因果関係は認められなかった.このことから,高齢者では認知機能を維持することによって,中長期的に高度な自立(高次生活機能)の維持がもたらされる可能性が示唆される.
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