2011 Fiscal Year Annual Research Report
葉酸の摂取及び血清濃度と抑うつに関する職域疫学研究
Project/Area Number |
21790598
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Research Institution | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
Principal Investigator |
南里 明子 独立行政法人国立国際医療研究センター, 臨床研究センター・疫学予防研究部, 室長 (80523646)
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Keywords | 保健栄養 / 葉酸 / 抑うつ |
Research Abstract |
多くの研究で葉酸と抑うつとの負の関連が報告されているが、ほとんどが断面研究であるため、その因果関係までは明らかではない。そこで、平成18年度および平成21年度に同一職域集団で行った疫学調査のデータを用いて、平成18年度(ベースライン調査)の血清葉酸濃度とその3年後(追跡調査)の抑うつ症状との縦断的関連を分析した。解析対象者は、ベースライン調査に参加した547名のうち、ベースライン時に抑うつ症状のある(Center of Epidemiologic Studies Depression[CES-D]Scaleスコア16点以上)人、調整要因に関するデータ欠損者、さらに追跡調査不参加者を除外した272名(男性164名、女性108名)であった。抑うつ症状の評価にはCES-Dを用いた。ベースラインの血清葉酸濃度の三等分位により対象者を三群に分け、多重ロジスティック回帰分析により交絡要因を調整した三等分位最小群に対する他群の抑うつ症状ありのオッズ比を算出した。ベースライン時に抑うつ症状のなかった272名のうち、45名(16.5%)は3年後に抑うつ症状がみられた。ベースラインの血清葉酸濃度が高いほど、3年後の抑うつ症状ありのオッズ比は有意に低下し、多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は、最小三分位群から順に1.00(基準群)、0.66(0.29-1.52)、0.40(0.16-0.99)であった(傾向性p値=0.047)。血中の葉酸濃度高値は、抑うつのリスク低下に関連していることが示唆された。 うつやうつが原因どなり引き起こされる自殺は年々増加しており、特に中高年男性において顕著である。そのため、職場におけるメンタルヘルス対策が義務化されるなど国をあげて対策が実施されることになった。しかしながら、中高年を対象に抑うつに関連する食事要因について検討した研究は少なく、日本での研究はほとんどない。したがって、葉酸や食事パターンなどの食事要因と抑うつとの関連を検討した本研究成果は、抑うつ予防に貢献できると考えられる。
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