2009 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷・温暖境界期における法昆虫学的死後経過時間推定の精度向上に関する研究
Project/Area Number |
21790613
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
三枝 聖 Iwate Medical University, 共通教育センター, 講師 (30398490)
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Keywords | 昆虫 / 社会医学 / 生態学 / 法昆虫学 |
Research Abstract |
法昆虫学は死体を蚕食している昆虫あるいはその活動痕跡などを指標にして死後経過時間を推定する分野である。気温が高く昆虫が活発に活動している夏期ならば,合理的な推定をすることが比較的容易であるが,早春・晩秋など気候の変化が著しい寒冷・温暖境界期に発見された死体が昆虫の蚕食を受けている事例では,その昆虫を解析し,死後経過時間を推定することが困難な場合が多い。そこで,ヒト代替モデルとして着衣させたブタ屍(10~15kg)を屋外に留置し,ブタ屍の死後変化および昆虫の活動(誘引・産卵/産仔・蚕食など)について経時的に観察・記録した。平成21年度はブタ屍留置実験を8月上旬から9月上旬まで(温暖期),10月中旬から12月上旬まで(寒冷・温暖境界期)の2回実施した。本実験のようにヒト日常生活圏では,双翅目が主要な死体蚕食をおこなう昆虫であることが確認され,温暖期における第1入植種はヒロズキンバエLucilia sericataであった。また,本種は寒冷・温暖境界期にも産卵が観察され,活動期間が長いことが明らかとなった。一方,寒冷・温暖境界期の第1入植種は,温暖期には観察されなかったオオクロバエCalliphora lataであり,死体上に本種が存在した場合は,温暖期との判別に有効であることが示唆された。また,寒冷・温暖境界期は,留置期間が50日以上であったにもかかわらず,双翅目成虫新個体の羽化のみならず,蛹も観察されなかったこと,鞘翅目昆虫の活動が極めて乏しいことなど,温暖期との判別に有効と思われるいくつかの昆虫相の特徴が明らかになった。
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