2010 Fiscal Year Annual Research Report
寒冷・温暖境界期における法昆虫学的死後経過時間推定の精度向上に関する研究
Project/Area Number |
21790613
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
三枝 聖 岩手医科大学, 共通教育センター, 講師 (30398490)
|
Keywords | 昆虫 / 社会医学 / 生態学 / 法昆虫学 |
Research Abstract |
死後変化が進み,昆虫の蚕食を受けている(あるいは昆虫が活動した痕跡がみられる)死体について,法昆虫学により死後経過時間を推定する際,気温が高く,昆虫の活動が活発な夏期における推定は比較的容易であるが,早春・晩秋など気候の変化が著しい寒冷・温暖境界期の事例では,推定が困難な場合が多い。その主たる原因はこのような時期の昆虫の活動について不明な点が多いことによる。そこで,ヒト代替モデルとして着衣させたブタ屍(10~15kg)を屋外に留置し,ブタ屍の死後変化および昆虫の活動(誘引・産卵/産仔・蚕食など)について経時的に観察・記録した。平成22年度は春期(4月中旬~5月末),夏期(8月上旬~8月末),晩秋期(10月下旬~)の3回実施した。夏期における第1入植種はヒロズキンバエLucilia sericataであり,ブタ屍が7日程度で軟部組織がほぼ蚕食されてしまうなど死体昆虫相およびブタ屍腐敗分解過程とも昨年度と類似した結果が得られた。晩秋期の第1入植種はフタオクロバエTriceratopyga calliphoroidesとなり,昨年度(オオクロバエCalliphora lata)とは異なるものの,鞘翅目昆虫がみられないなど昨年と同様,昆虫相の種数に乏しく死後変化も比較的緩徐に進行する結果であった。春期の第1入植は4月下旬(例年双翅目幼虫が採集される法医解剖および死体検案事例が発生するのとほぼ同時期)であり,第1入植種は晩秋期と同じフタオクロバエであった。実験終了時に鞘翅目ケシキスイ成虫が多数採集されたが,正確な入植時期は不明であった。ブタ屍の死後変化は晩秋期と類似した緩徐な進行であり,春期に発見された死体が冬期(前年の秋期)を経たか否かの鑑別は困難であるが,指標となる昆虫種の有無や入植順序の詳細な分析が必要であると思われる。
|
Research Products
(3 results)