2010 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ストレスによる、脳血管性認知症発症促進機構の解析
Project/Area Number |
21790639
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Research Institution | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
Principal Investigator |
國本 正子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 加齢健康脳科学研究部, 流動研究員 (30350135)
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Keywords | 脳血管性認知症 / CADASIL / Notch3 / ストレス / 血管性認知症モデル動物 / 遺伝環境相互作用 |
Research Abstract |
脳血管性認知症は原因や症状が多岐にわたるため、その発症機序の解析はあまり行われていない。本課題では、家族性脳血管性認知症(CADASIL)型の変異Notch3を発現するマウス(KI)を用いて、ストレスとCADASIL発症との関連を解析した。脳由来タンパク質の生化学的解析では、2年齢KIマウスにおいてNotch3タンパク質の蓄積が認められた。また、マイクロアレイ解析や質量分析から、Notch3遺伝子変異により発現変化のみられる遺伝子およびタンパク質を抽出し、脳および脳由来精製血管を用いて発現部位、および発現量の検証を行ったところ、KIマウスでWTと異なるパターンを示すタンパク質の候補が数種見いだされた。CADASIL患者では、脳組織以外に、末梢の動脈においてもNotch3タンパクの蓄積をはじめとする組織学的変化がみられること、皮膚生検が診断に用いられていることなどから、尾動脈の組織学的解析も行った。その結果、2年齢KIマウスにおいて、Notch3タンパク質の蓄積、血管平滑筋細胞(VSMC)マーカータンパク質染色性の低下などのCADASIL様特徴にくわえ、VSMC層の構造変化が観察された。さらに、若年齢のマウスを用いてストレスの影響を調べたところ、これらの尾動脈における変化は、慢性ストレスを負荷したKIマウスにおいて促進されることが見いだされた。慢性ストレスを負荷したKIマウスでは、若年でも老齢KIでみられたCADASIL様特徴を示したことから、変異遺伝子と環境要因の相互作用により脳血管性認知症の発症が促進される可能性が示唆された。 今回構築したCADASILモデルマウスを、病理学的、生化学的、分子生物学的な手法によりさらに詳細に解析することで、CADASILの発症機序の解明のみならず、大脳細動脈病変や皮質下性認知症などの脳血管障害の病態解明に貢献できると思われる。
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