2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝発生初期における肝幹細胞の増殖・分化を制御する細胞間相互作用の解析
Project/Area Number |
21790650
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
紙谷 聡英 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30321904)
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Keywords | 肝細胞生物学 / 肝幹・前駆細胞 / 肝発生 |
Research Abstract |
大量に得ることが困難な組織幹細胞をin vitroで培養・増殖し、再生医療へと応用することを目的として、胎生期の肝臓における幹細胞の増殖・分化誘導機構の解明を行った。胎生期の肝幹細胞は、肝発生中期(マウス胎生13日,E13)の細胞を用いた解析が長年行われ、DlkやLiv2、CD13といった特異的マーカーが同定されている。しかし、腸管より肝芽の形成される肝発生初期の肝幹細胞の動態は未だ明らかでない。我々は既に肝発生初期(マウスE9.5,E10.5)の肝臓にDlk、CD13両陽性の細胞が存在することを見いだしている。そこで、E9.5及びE10.5マウス肝臓からDlk・CD13両陽性の細胞を純化し、コロニー形成能やマーカータンパク質の発現を解析した。コロニーアッセイを行った結果、コラーゲン上の単層培養系では肝発生初期由来のDlk・CD13共陽性細胞は肝発生中期由来の細胞と比較してコロニー形成能が著しく低い傾向が認められた。そこでfeeder細胞を用いた共培養を行った結果、肝発生初期のDlk・CD13共陽性細胞からもAlbumin及びCytokeratin19(CK19)両陽性であるコロニーが得られた。E9.5のDlk・CD13共陽性細胞の培養にはRho Kinase阻害剤の添加が必要であるのに対し、それ以降のDlk・CD13共陽性細胞ではRho Kinase阻害剤の効果は見られなかった。各発生段階のDlk・CD13共陽性細胞での遺伝子発現を解析したところ、発生が進むにつれて肝細胞特異的遺伝子の発現が上昇していた。一方、内胚葉系細胞のマーカーであるSox17の発現は、E9.5で最も強くその後減少する。以上より、肝発生初期のDlk・CD13共陽性細胞はより内胚葉系前駆細胞に近い性質も保持しており、その後肝幹・前駆細胞としての形質を獲得していくことが示唆された。
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