2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790651
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 Tokyo Medical and Dental University, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (50451935)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 杯細胞 / 粘膜再生 / Notchシグナル / Deltaリガンド / γ-セクレターゼ阻害剤 / MUC2 / 腸管上皮細胞 |
Research Abstract |
本研究は炎症性腸疾患における特異的な上皮分化機構の解明を通して、同疾患に於ける上皮再生治療への応用を最終的な目的としている。1ヒト腸管粘膜におけるNotchリガンド発現解析:ヒト腸管粘膜組織を用いたRT-PCR法による解析により、(1)Notchリガンド分子Delta及びJaggedの発現が確認された。更にヒト腸管粘膜組織の免疫組織学的解析により、(2)ヒト腸管粘膜に於いて、Deltaリガンドは杯細胞選択的に発現していた。一方、(3)Jaggedリガンドは腸管上皮に広く発現が見られた。2ヒト腸管上皮細胞におけるNotchリガンド分子Deltaの分子機能の解明:ヒト大腸癌由来培養細胞株に於ける誘導発現系及びγ-セクレターゼ阻害剤を用いてヒト腸管上皮細胞におけるNotchシグナル活性化と不活性化がそれぞれNotchリガンド発現制御に与える影響を解析した。その結果、(1)Notchシグナル活性化は杯細胞特異的遺伝子MUC2と同時にNotchリガンド分子Delta発現の著しい減少を誘導した。(2)Notchシグナル不活性化は杯細胞特異的遺伝子MUC2と同時にNotchリガンド分子Delta発現の著しい増加を誘導した。(3)Notchシグナル不活化によって誘導されるDelta-1の発現誘導を抑制すると、MUC2遺伝子の発現誘導も同時に抑制された。即ち、ヒト腸管上皮細胞におけるDeltaの発現は、杯細胞形質獲得を正に制御する機能を担っているものと考えられた。これらの成果は、難治性炎症性腸疾患における「杯細胞の減少」がNotchシグナルの活性化のみならず、Notchリガンド分子Deltaの発現そのものにも制御され得ることを示した画期的知見であり、炎症性腸疾患の病態解明と粘膜再生治療法の開発に重要な基盤となる新知見を提供した。
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