2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790651
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡本 隆一 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座教員 (50451935)
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Keywords | Notchシグナル / 炎症性腸疾患 / 杯細胞 / Hath1 / Hes1 / 粘膜再生 / Olfm4 / 幹細胞 |
Research Abstract |
本研究は炎症性腸疾患における特異的な上皮分化機構の解明を通して、同疾患に於ける上皮再生治療への応用を最終的な目的としている。1.ヒト小腸粘膜における分化決定因子の解析:ダブルバルーン内視鏡による同一ヒト個体の小腸粘膜における長軸方向の遺伝子発現解析を実施した結果、(1)十二指腸~回腸末端方向により多くの杯細胞が配置されていること、(2)この杯細胞分化に際し、Notchシグナル下流の転写因子Hath1とKlf4の協調が重要であること、を明らかとした。2.ヒト炎症性腸疾患におけるHath1発現制御と「杯細胞消失」の分子機構解析:ヒト炎症性腸疾患におけるHath1発現と杯細胞分化制御の解析を行った結果、(1)Hath1発現はNotch-Hes1経路による直接制御を受けていること、(2)炎症腸管粘膜におけるNotchシグナルの活性化が「杯細胞の減少」を誘導するにはHath1の発現抑制が必須の役割を担っており、同機構を介して炎症粘膜再生に寄与している可能性があること、が明らかとされた。3.ヒト炎症性腸疾患における幹細胞特異的遺伝子Olfm4発現制御機構の解析:ヒト炎症性腸疾患における幹細胞特異的遺伝子Olfm4発現と制御機構解析を行った結果、(1)炎症部の再生粘膜でOlfm4発現が誘導されること、(2)同遺伝子の発現はNotchシグナルとTNF-αにより協調的に制御されていることを示した。これら成果は、炎症性腸疾患におけるNotchシグナルの活性化が下流の転写因子Hes1-Hath1を介した分化制御により粘膜再生を促進し得る分子機構を解明したものであり、炎症性腸疾患の病態解明と粘膜再生治療法の開発に重要な基盤となる新知見を提供した。
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