2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌合併肝硬変を含む自己培養骨髄細胞投与による新規肝臓再生療法をめざした基礎研究
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21790667
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高見 太郎 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (60511251)
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Keywords | 肝発癌 / 骨髄細胞 / 肝硬変症 |
Research Abstract |
【目的】これまで我々は、肝細胞癌合併のない非代償性肝硬変症に対して「自己骨髄細胞投与(ABMi)療法」を多施設臨床研究として行い、その有効性・安全性を明らかにしてきた。しかし肝硬変症は高発癌状態であるため、自己骨髄細胞投与が肝発癌機構に与える影響を評価することは極めて重要である。そこでマウス肝硬変発癌モデルを新規に作成し、自己骨髄細胞投与の肝発癌への影響を解析評価することを目的とした。【方法】生後2週オスマウス腹腔内へのN-nitrosodiethylamine (DEN)単回投与と、DEN投与後1ヶ月からのCarbon tetrachloride週2回腹腔内反復投与により「マウス肝硬変発癌モデル(DEN/GFP-CC14モデル)」を作成し、これをコントロール群(n=17)とした。また、DEN/GFP-CC14モデルマウスにDEN投与後2ヶ月目から2週間毎に同種同系マウスGFP陽性骨髄細胞を尾静脈投与し、これを投与群(n=23)とした。DEN投与後4.5ヶ月時点(骨髄細胞は計5回投与)の肝発癌動態を、組織学的にfociおよび腫瘍(腺腫+肝細胞癌)の発生率、個数とサイズにより評価し、生存率も併せて検討した。また肝線維化をSirius-red染色により評価し、酸化ストレスは肝8-OHdG量(ELISA法)により評価し、自己骨髄細胞投与の肝発癌に与えるメカニズムを解析した。【結果】DEN投与後4.5ヶ月において、foci発生率(コントロール群/投与群;61.5/23.1(%),p<0.001)、foci個数(1.66/0.62(個/cm2),p<0.01)は投与群で有意に低く、fociサイズ(0.35/0.36(x0.1mm2),p=0.35)は同等であった。さらに、腫瘍発生率(61.5/15.4,p=0.03)および腫瘍個数(2.22/0.17,p<0.001)も投与群で有意に低下しており、腫瘍サイズ(3.67/3.67,p=0.43)にも差を認めなかった。生存率はDEN投与後4.5ヶ月までの観察期間で有意差こそ認めないものの、投与群で改善傾向を認めた(DEN投与後3.75ヶ月;p=0.06)。また背景肝の線維化は投与群で有意に少なく(p=0.03)、肝8-OHdG量も投与群でコントロール群に比べ0.85倍と有意に低値であった(p=0.005)。【結論】頻回の自己骨髄細胞投与でも肝発癌は促進されることなく、むしろ抑制され、また腫瘍増殖も促進されることはなかった。自己骨髄細胞投与により肝内Re-dox状態の持続的な安定化により肝発癌が抑制された可能性が示唆された。
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Research Products
(10 results)