2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規炎症関連蛋白サイクロフィリンの肺高血圧促進機構
Project/Area Number |
21790698
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 公雄 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (80436120)
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Keywords | 酸化ストレス / 肺高血圧 / 血管平滑筋細胞 / 低酸素ストレス / 大動脈瘤 / 心不全 / 心肥大 |
Research Abstract |
肺高血圧症は肺血管内皮機能、血管平滑筋細胞増殖、骨髄由来細胞が複雑に相互作用し肺動脈リモデリングが進行する難治性疾患である。肺動脈リモデリングの進行には、酸化ストレスが重要な促進因子として働いていると考えられているが、そのメカニズムは不明な点も多い。本研究助成金により、低酸素ストレス下でヒト肺動脈血管平滑筋細胞よりサイクロフィリンAが分泌されることを確認した。また、肺高血圧患者由来の肺動脈血管平滑筋細胞からは健常者由来の細胞に比して、多くのサイクロフィリンAが分泌されることを確認した。これらは、その分泌において重要な働きを有するRho-kinase系を特異的阻害剤で抑制すると、完全に抑えられることを確認した。以上の研究成果は2010年11月に米国シカゴで開催されるアメリカ心臓協会(AHA)年次総会および2011年3月に横浜で開催される日本循環器学会年次集会シンポジウムに採択された。一連の研究により、サイクロフィリンAが血管平滑筋細胞における酸化ストレス増幅蛋白として機能することも確認した(Circulation J 2010, Antioxidants & Redox Signaling 2010)。分泌された細胞外サイクロフィリンAは骨髄由来細胞の遊走を促すと同時に、血管平滑筋の細胞増殖や遊走能を高め、血管狭窄病変の病態に重要であることを報告した。また、サイクロフィリンAが酸化ストレス増幅のみならず、MMP活性化に重要であり、腹部大動脈瘤や心肥大の促進因子であることを確認した(Nat Med. 2009, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2011)。細胞外サイクロフィリンAは血管内皮の接着因子の誘導・内皮型NO合成酵素(eNOS)の発現低下・骨髄由来細胞の遊走を介して動脈硬化を促進することも明らかにした(J Exp Med. 2011)。さらに、臨床的意義を確認するために、ヒト由来の肺動脈血管平滑筋細胞の樹立に成功し、臨床応用を目指した多角的検討を行い、報告した(AHA 2010, Chicago)。
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