2010 Fiscal Year Annual Research Report
内在性アセチルコリンの心筋保護作用の機序解明と虚血性心不全の新規薬物治療への応用
Project/Area Number |
21790729
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
有川 幹彦 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20432817)
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Keywords | 生体機能利用 / 心機能保護 / コリンエステラーゼ阻害剤 / アセチルコリン |
Research Abstract |
現代の高齢化社会において、死因第二位とされる虚血性心疾患の治療法開発および予防対策は、循環器領域の基礎・臨床研究における重要課題のひとつである。本研究では、副交感神経活動がもたらす心不全病態改善作用のメカニズムを分子レベルで理解することを目的として、アセチルコリンが持つ内在性の心筋保護作用を詳細に検討するために、心筋梗塞モデル動物に対するコリンエステラーゼ(アセチルコリン分解酵素)阻害剤の影響を定性的・定量的に評価した。 これまでの研究において、コリンエステラーゼ阻害剤が、血圧および心拍数非依存的に、心筋梗塞急性期における左心室自由壁破裂による死亡率を低下させること、梗塞部位における細胞外基質分解酵素(MMP-9)のmRNAおよびタンパク質発現量を減少させること、さらには、梗塞部位に浸潤してきた炎症系細胞からのMMP-9産生を抑制することを明らかにした。そこで、マウス腹腔内マクロファージを単離・培養し、MMP-9産生・放出に対するコリンエステラーゼ阻害剤の影響について、細胞および培地を試料としたWestemblot法、酵素電気泳動法、免疫蛍光抗体法を用いて検討を行った。その結果、コリンエステラーゼ阻害剤処理により、単離・培養マクロファージによるMMP-9の細胞内合成、細胞外放出、および放出MMP-9の酵素活性が抑制されることが明らかになった。また、これらのコリンエステラーゼ阻害剤のマクロファージMMP-9に対する抑制効果は、非コリン作動系のシグナル伝達を介している可能性が示唆された。 本研究では、コリンエステラーゼ阻害剤が心筋梗塞急性期における浸潤性細胞による炎症反応を非コリン作動系のシグナル伝達を介して抑制し、血圧および心拍数非依存的に左心室自由壁破裂リスクを低減させることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)