2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21790739
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岩本 紀之 Nagoya City University, 大学院・医学研究科, 研究員 (70534709)
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Keywords | HDL / ABCA1 / コレステロール / カルモジュリン / カルパイン / 動脈硬化 |
Research Abstract |
ABCA1はHDL新生の必須因子であり、その遺伝子変異による機能障害はHDLの著しい低下を招く。またABCA1の増加はHDLの増加をもたらし、動脈硬化症の進展を抑制する。ABCA1の活性は、遺伝子の発現促進と同時に、蛋白質分解酵素カルパインによるその分解によっても制御され、これらの反応がHDLの増加薬の標的とされる。ABCA1の活性には細胞内カルシウムによる制御が観察され、カルモジュリン阻害剤であるW7が増加させることが知られている。この背後にある機序を明らかにするために、ABCA1活性のカルモジュリンによる制御を詳細に検討した。マウス繊維芽細胞BALB/3T3細胞とヒトマクロファージ株細胞THP-1細胞において、カルモジュリンは細胞内カルシウムに依存してABCA1に結合し、この結合によりABCA1のカルパインによる分解が干渉された。その結果、ABCA1蛋白量は増加し、細胞外アポリポ蛋白質A-IによるHDLの産生は増加した。カルモジュリン結合部位とされる1-5-8-14アミノ酸配列はABCA1の細胞質側ループに存在し、これはカルパインによる切断部位とされるPEST配列の25残基アミノ末端側にある。この部分のペプチドを作成し検索することにより、カルモジュリンは実際この1-5-8-14アミノ酸配列に結合し、それによりカルパインによるPEST配列の切断が阻害された。カルモジュリン阻害剤であるW7は、予想とは逆にカルモジュリンのABCA1への結合を促進し、その結果ABCA1の分解を抑制してABCA1を増加させ、HDL産生を高めることが示された。カルモジュリン阻害剤とされるW7がこのような効果を持つことは、今後カルモジュリンの機能を検討する上で重要な情報となる。またこの結果により、BACA1の活性促進とHDLの増加を計る上での新たな標的反応が見いだされたことになる。
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Research Products
(2 results)